代表あいさつ


創造デザイン学会 代表 渡辺久義(京都大学名誉教授) 渡辺代表写真

 我々を取り巻く現在の社会環境が、健全な状態にあると思う人はいないでありましょう。何かが欠落し、社会全体が不健全な状態にあると感ずるが、さりとてこれを立て直す方策もないという無力感が、社会全体を覆っているように思われます。そもそも健全と不健全の区別さえ、我々の社会にはないと言ってもよいでしょう。

 私たちの学会は、そういう世の中に対する指導原理の確立を、根本動機として設立されました。目的ははっきりしています。それはこの世の中の唯物論的体質を根本から改善しようということです。そうしない限り、我々は生きる方向を定めることができません。生きる方向が定まらなければ、一々の行動も意味をもつことができず、勉学意欲を失った学生が我々の社会の典型です。

 なぜ世直し運動として学会を作るのか。これは説明を要するかもしれません。それは、今の大学の学問体制が諸悪の根源と我々は見るからであり、これを正すには学問のレベルにおいてでなければならないからです。おおむね、今の世界の大学の学問・教育の根本的前提となっているのは自然主義というもので、自然主義とは、学問の方法・哲学の観点からみた唯物論のことです。
 いわゆるアカデミズムの底流をなしている三つの思想があります。マルクシズム、ダーウィニズム、フロイト思想で、これらが直接、あるいはさまざまに形を変えてアカデミズムの基本体質を作っています。そして大学から流出したこうした唯物思想が、権威を帯びて社会一般の風潮を作ることになるのです。

 私たちは、今アメリカに台頭し、大きな勢力となりつつある「インテリジェント・デザイン(ID)」と呼ばれる理論に共感と期待を寄せています。これは科学の前提となっている自然主義――自然界には盲目的な自然の力しか働いていない、宇宙には目的も方向もないという立場――を否定しこれを乗りこえる、新しい科学の枠組みであり、これは単なる科学革命を超えて、文化大革命となる可能性をもっています。

 ID運動も最初はそうであったように、私たちの主張も、既成の学問体制にとっては、うとましく無視すべき異説と映るであろうことは予想されます。しかし、私たちに共感してくださる方々はもちろんですが、反対の立場の方々にも討論に参加してくださることを我々は切望します。学問や思想は、真剣で冷静な討論を通じて進歩するものです。アメリカの例が示すように、ダーウィニズム体制に取り込まれている人々が我々の主張に耳を傾けるのは難しいであろうことはよくわかります。しかし、そういうこだわりやしがらみを捨てるところから、学問の進歩は可能になるものと私たちは確信しています。

 

 

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