Evolution News & Views

査読付き医学論文が進化科学と誤った進化論教育に挑む

Casey Luskin
January 17, 2012

査読付き学術誌Baylor University Medical Center Proceedingsに掲載されたベイラー大学医療センター外科部門のDr. Joseph Kuhnによる論文が、化学進化と生物進化の両方に多くの難問を突き付けている。「ダーウィニズムを解剖する(Dissecting Darwinism)」と題するこの論文は、まず化学進化と生物進化に挑戦したテキサス州教育委員会での議論で出されたいくつかの論点を挙げている。

1. 生命の化学的起源に関するデータでDNAの起源を説明することの限界
2. 突然変異と自然選択の理論で細胞の還元不能な複雑性を扱うことの限界
3. 移行種のデータでその移行に関わる無数の変化の理由を説明することの限界
(Joseph A. Kuhn, "Dissecting Darwinism," Baylor University Medical Center Proceedings, Vol. 25(1): 41-47 (2012).)

生命の化学的起源について、クーンはミラー=ユーリー実験に言及し、「低酸素、高窒素の還元環境という実験条件の誤りが証明された」ともっともな意見を述べている。Stephen Meyerの『細胞の中の署名』(Signature in the Cell)を引用しながら、彼は「DNAの驚くべき複雑性とそこに内在する情報の中に、ダーウィン進化論の根本的で克服不能な問題がある」と主張する。またクーンは「ダーウィン進化および自然選択は生命の起源ではあり得ない。なぜなら、それらが機能するには複製が必要だが、生命の起源より前に複製は起こらなかった」と説明する。生命が持つ情報を体系化できる他の既知の原因はないのである。

それからクーン博士は還元不能の複雑性の概念の説明へと移り、Michael Beheの著書『ダーウィンのブラックボックス』(Darwin's Black Box)を引用しながら「還元不能の複雑性は、ダーウィン進化論で理論化されたたような段階的、連続的改善を通 じて進化が起こるのではなく、あるシステムのすべての要素が同時に存在しなければならないことを示唆している」と述べている。さらに、「これらの還元不能な複雑性を持つシステムがDNAによって特別 にコードされているという事実は、『特定された複雑性』(specified complexity)と呼ばれる別の複雑性の層が加わることを意味している」と続ける。医師であるクーンは、人間の体内で還元不能な複雑性を持つシステムには「視覚、バランス、呼吸器系、循環器系、免疫系、消化器系、皮膚、内分泌系、味覚」などが含まれると述べている。そして「人体は細胞および器官/系を基礎とする還元不能な複雑性の表現である」と結論づけている。

またクーンは人間/サルの共通の祖先の問題について検討し、Jonathan Wellsの著書『ジャンクDNA神話』(The Myth of Junk DNA)を引用しながら次のように論じている。

タンパク質のマッピングで得られた既存の配列のみを考慮した場合、サルと人間のDNAの相同性は96%だと報告されている。この配列はゲノム全体の2%のみを占める。しかしながら、以前は「ジャンクDNA」と考えられていたものも含めてすべてのゲノムを考慮すると、実際のDNAの類似性は約70〜75%になる。現在このようなジャンクDNAは転写 や発現を支える要素をコードすることが明らかになっている。この25%の違いは35万回の単一ヌクレオチド変化と5万回の挿入・欠失に相当する。

クーン博士は、これがダーウィン進化論にある問題を提起すると考える。「サルから人間への種の変化には、新たなDNAの形成につながる途方もない速度の突然変異、何千種類もの新たなタンパク質、そして細胞、神経、消化、免疫と関連する無数のDNA変化が必要であり、このようなDNAが何千種類もの新たな機能的タンパク質をコードする」からである。

またクーンは、カンブリア爆発からもネオ・ダーウィニズムに対する挑戦が突き付けられていると見る。

ダーウィンの時代には数千種類の標本が入手可能だったが、過去50年間に数百万種類の標本が分類され、研究された。その一つ一つが、5億2500万〜5億3000万年前のカンブリア紀における比較的短い時間に動物界のほぼすべての門(35/40)が爆発的に現れたことを示しており、注目に値する。その時代以降、時折種の絶滅が起こったが、説得力のある証拠によって新たな門が特定されたことはほとんどない。古人類学者J. ValentineとD. H. Erwinは彼らが執筆した重要な論文の中で、カンブリア紀に発生したどの門にも移行種が存在しないという事実は、ネオ・ダーウィニストによる進化の説明に限界を与えていると述べている。

テキサスで、ダーウィン進化論の科学的な長所と短所の議論が求められたにもかかわらず、クーンは「2011年に州教育委員会に新しい教科書が提出されたが、10件中9件が、義務付けられた補助カリキュラムを備えていなかた。補助カリキュラムは進化論の肯定的な面 と否定的な面の両方を含むべきものだった(44)」と結論している。彼は『ディスカヴァリー研究所の教科書に関する報告』を引用し、次のように嘆いている。

数種類の教科書が今も事実に反して、誤りが明らかになったミラー=ユーリーの生命の起源に関する実験、機能しない虫垂や扁桃腺に関して昔からある間違った主張、Ernst Haeckelが描いた詐欺的な胚の絵などを奨励し続けている。要するに、今、生物学を学んでいる学生たちや意欲的な医学生たち、未来の科学者たちは、物語の全体を教えられていない。それどころか、彼らはDNAや細胞、あるいは種から種への移行の説明として、ランダム突然変異や自然選択の効果 を誇張する不完全で間違った教材を、与えられ続けているのだ。

クーンは「したがって今は学生たちや生物学者たち、医師たちに新しいパラダイムの可能性を啓蒙すべき時である」と結論づけている。

不見識で不正確な、ダーウィン的前提に満ちた、クーンへの反論

この学術誌は、ヴァージニアの心臓血管外科医Charles Stewart Robertsによるクーンへの反論も掲載した。ロバーツ博士の反論は単に、まるでそれが科学的裏付けの必要がない真実であるかのように、すべての生物学的特徴は進化によって生じ得ると主張している。

進化論に対する反論としての細胞の「還元不能の複雑性」の概念は、現在の私の理解を超えている。しかし生命が何十億年も地球上に存在してきたことを考えれば、たとえ進化が還元不能なほど複雑であったとしても、そのための十分な時間があったのではないか。

ダーウィン進化論を擁護する立場の、このような不見識で不明瞭な議論について我々はも言及してきた。莫大で終わりのない時間(とその他の確率的能力)に漠然と訴えて、ダーウィン進化が「どれほど複雑なものでも」生じ得ると決めてかかることはできない。そうでなく、その特徴を生み出すだけの、十分な確率的能力が存在することを示さなければならないのだ。

インテリジェント・デザインの支持者たちは、仮説を立てることではなく、ダーウィンのメカニズムによって何が可能なのか、あるいは何が不可能なのかを問うているのだ。例えば、2010年に出版されたID派科学者Doug Axeの査読付き研究論文は進化するバクテリアの集団をモデルに用いている。そしてダーウィン進化が多重変異特徴を生み出す能力は、極めて限られていることを示した。(多重変異特徴とは、ある生物に何らかの利点がもたらされる前に、多重変異が存在することを要求する特徴のこと。)

アックスの研究は、ダーウィン進化論に非常に有利な仮定条件を立てている。彼は無性生殖によって急速に増殖可能な――例えば1日3回――バクテリアの巨大な集団が、数十億年にわたって存在すると仮定した。しかし彼は、6回以上の中立突然変異を必要とする複雑な適応は、地球の全歴史にわたって利用可能な確率的能力を超えることを発見した。さらに、もし複雑な適応のために、わずかに不適応な中立突然変異が必要だとしても、1〜2個(最大でも2個)の突然変異が固定化されるだけである。もしかなり不適応な突然変異が必要であれば、その特徴は決して発現しない。アックスは彼の研究の意味について次のように論じている。

ここに含まれるもっとも重要な意味は、この2つのケースがどれほど異なっているかではなく、どれほど一貫しているかという点にあるのであって、どちらも複雑な適応が極めて限定されることを示している。この点を理解するため、このような限定的な複雑性の適応に必要な莫大な数の細胞を考えて欲しい。我々は計算の基礎数として、数十億年にわたって、毎年1000世代を通 じ、10の9乗の有効個体を維持するバクテリアの集団を想定した。これは10億兆回を優に超す進化実験の機会(その系統がすぐに消滅することのない個体という形で)に相当する。それでも、塩基変化の組み合わせの形で、これらの膨大な保有能力によって達成が望めることは、指を折って数える程度しかない。
(Douglas D. Axe, "The Limits of Complex Adaptation: An Analysis Based on a Simple Model of Structured Bacterial Populations," BIO-Complexity, Vol. 2010(4):1-10.)

アックスの論文は、我々が目にする生命のすべての特徴が「どれほど複雑であっても」、それを生み出すのに十分な確率的能力が存在するかのような、ロバーツの想定は、成り立たないことを示唆している。さらにアックスとAnn Gaugerによる追跡研究は、多くの特徴が、何らかの利点をもたらす前に、地球の歴史上に起こり得る以上の多くの突然変異を必要とすることを示唆している。彼らは2011年の研究で、あるタンパク質を、密接に関連する別 のタンパク質に変換しようと試みた。これは進化論者が生命の歴史上容易に起きたと主張する類の変化である。突然変異を分析した結果 、彼らはそのタンパク質とそれが持つ機能を、その密接な親戚 とされるものに変換するのに、最低でも7回―恐らくそれ以上―の独立した突然変異が必要であることを発見した。これはダーウィンのメカニズムが持つ創造の力を著しく制限することになる。

ダーウィン進化論が革新的な酵素の出現について説明できる範囲は、注意深く調査した結果 、非常に限られているように見える。新しいタンパク質の折り畳みをもたらすような大規模な革新はその限界をはるかに超えているようだ。本稿は、少なくとも小規模ないくつかの革新でさえダーウィン進化の手には負えないかもしれないと主張する。もしこの類の研究が、これが例外的というより典型的な事実であることを示唆し続けるならば、もっとも興味深い起源の問題に対する答えは、恐らく全体的な説明の代案が考えられるまで、保留されるであろう。
(Ann K. Gauger and Douglas D. Axe, "The Evolutionary Accessibility of New Enzyme Functions: A Case Study from the Biotin Pathway," BIO-Complexity, Vol. 2011(1) (2011).)

残念ながら、ロバーツ博士のような考え方は、進化論者たちのあいだできわめて一般 的なものである。彼らは単純に、自分たちの理論は証明されていなくても真実だと考えている。ID派は、はるかに洗練されたアプローチを取り、ダーウィニストの長年の主張をテストする研究を行い、それらが間違いであることを突き止めている。

最新情報INDEX