Evolution News & Views

インテリジェント・デザインの未来はどれくらい明るいか?

Casey Luskin
December 23, 2011

過去数年にわたり、キッツミラー対ドーヴァー裁判でジョーンズ判事が判決を下した12月20日になると、我々はしばしばこの判決に関する記事を掲載してきた。当然ながら、批判者たちの中には我々がいつまでもドーヴァー裁判に「取りつかれている」という者もいる。この非難は皮肉なものだ。ドーヴァーに絶え間なく言及しているのは進化論ロビーの側であって、ディスカヴァリー研究所ではない。彼らは多くの犠牲を払って得た勝利を思い出して味わっているのだが、彼らが打ち負かしたという「インテリジェント・デザイン」はID批判者の捏造話にすぎない。これについては今後の記事で多くを述べたい。

いずれにしても、この水曜日の朝、ENVに寄稿している我々の何人かは大笑いした。オフィスに着くと誰かがドーヴァー判決の6周年だったと指摘したのだ。前の日のことである。マックスウェル・スマート(訳注:映画『ゲット スマート』の主人公)なら言ったかもしれない。我々は「そこまで」忘れていたのだ。ディスカヴァリー(研究所)の誰も気付きさえしなかった。そういうわけでドーヴァーを記念する投稿が遅れたことを心からお詫びしたい。

我々はなぜドーヴァーのことを忘れてしまったのか?それが大した問題ではないからである。ダーウィン・ロビーの願望や期待とは裏腹に、ドーヴァー後の数年でIDの科学的、文化的足跡はますます顕著で強い印象を与えるものとなった。

ネット上で息巻いたり、大学の講義室で説教したり、メディアで知識や権威があるかのように装ったりするID批判者たちは、ID運動が死んだと宣言したがる。彼らのうわさ話が伝えているように、2005年にある連邦裁判所判事がキッツミラー対ドーヴァー裁判で、IDは宗教であり、したがって公立学校で教えることは違憲だという判決を下した。これがID運動に「致命的打撃」を加えたはずであり、彼らによればID運動はそれ以来勢いを失ってほとんど消散したというのである。

このほら話は象牙の塔の貴族たちを安心させ、彼らにもはや門前に迫る野蛮人を恐れる必要はないと思わせたかもしれない。しかし実際にID運動に参加してこの論争にまつわる事実を知っている人々は、批判者たちが好む物語は真実にほど遠いことを理解している。

IDの科学ルネッサンス
読者が批判者たちから(特にメディアで)何を聞いていようと―あるいは聞いていまいと―、過去5〜10年間はID派の科学研究および査読付き科学論文の出版が盛んであった。

現在の繁栄期は2004年まで遡ることができるだろう。当時、ディスカヴァリー研究所上級研究員のStephen Meyerが学術誌Proceedings of the Biological Society of Washingtonで明確にインテリジェント・デザインを主張する画期的論文を発表した。2011年現在、ID運動は50番目の査読付きID派科学論文の発表とともに、さらに大きな節目を迎えた。これについては近いうちに詳しく述べたい。しかしこれは紛れもなくIDの科学的進歩を物語る出来事である。

これらの論文を産み出しているID関連研究の拠点が複数ある。

第一に分子生物学者Doug Axeが率いるバイオロジック研究所(Biologic Institute)が挙げられる。ここでは「生物学におけるインテリジェント・デザインの科学的証拠を明らかにし、検証している。」バイオロジック(研究所)は生物学における情報の起源と役割、生命を目的とする宇宙のファイン・チューニング、そしてデザインを検知する方法について、実験研究と理論研究の両方を行っている。研究テーマには以下のようなものが含まれる。

・ 知的原因によるものと対比しながら、導かれない(unguided)メカニズムが持つ能力を調査するコンピューター・モデルを構築し、検証する
・ 生命が必要とする宇宙的、物理的、生物学的ファイン・チューニングについて調べる
・ 科学者がデザインの特質を認識できるように、人間が複雑な構造物のデザインを行う方法を調べる

もうひとつのID研究グループは、ディスカヴァリー研究所研究員のWilliam Dembskiがベイラー大学の電気・コンピューター工学特別 教授Robert Marksとともに設立した進化情報科学研究所(Evolutionary Informatics Lab)である。彼らの研究所は大学院生の研究者たちを惹きつけ、コンピューター・プログラミングが「知的デザイナーとしての究極的情報源の必要性を指し示している」ことを示す複数の査読付き論文を技術科学誌や工学誌で発表した。

その他にも世界中で査読付きID派科学論文を発表したID派科学者たちがいる。ウィスコンシン大学スペリオル校の生物学者Ralph Seelke、ドイツのマックス・プランク植物育種学研究所を最近退官したWolf-Ekkehard L嗜nig、生命の起源科学財団(Origin of Life Science Foundation)のDavid Abelと彼の同僚たちなどが含まれる。

もうひとりの創造的な研究者にリーハイ大学の生物科学者Michael Beheがいる。2010年、彼は一流誌Quarterly Review of Biologyで論文を発表し、ダーウィン的進化は分子の機能を形成するというより破壊または減退させる傾向があると論じた。1これに続いて彼は物理学者David SnokeとProtein Science誌で、2つのタンパク質が単純に結合するダーウィン的進化は、もしそれが機能するために2回以上の突然変異を必要とするならば、多細胞生物では起こりにくいことを示した。2 2008年にビーヒーとスノークの批判者たちがGenetics誌で彼らを論破しようと試みた。しかし彼らが見出したのは、「より小さくて効果 的な人口規模を持つ人間」がダーウィン的進化を通じてたった2回の特定の突然変異に到達しようとしても、「この種の変化には1億年以上かかるだろう」ということだった。3批判者たちはそれが「合理的な時間的尺度の中ではきわめて起こりにくい」ことを認めた。

2010年、ダグラス・アックスは、ビーヒーとスノークの研究結果 を裏付けると思われる別 の査読付き論文を発表した。4彼は、何らかの利点を発揮するために複数回の突然変異を必要とする構造を進化させるバクテリアをモデルにした計算結果 を示した。アックスはダーウィン的進化に非常に寛容な仮定条件を立てながら、機能するために6回以上の突然変異を必要とする分子適応は地球の歴史上起こらないことを発見した。

バイオロジック研究所の分子生物学者Ann Gaugerがラルフ・シールケとともに発表した研究成果は、アックスとビーヒーの主張を実験によって裏付けた。彼らのチームは、アミノ酸トリプトファンの合成に必要な大腸菌の遺伝子を破壊するところから着手した。1カ所のみを破壊したところ、この細菌のゲノムに生じるランダム突然変異は遺伝子を「修復する」ことができた。5しかし機能を回復するために2回の突然変異が必要になっただけで、ダーウィン的進化はその仕事をこなすことができなかった。同様に、アックスとゲイジャーが2011年に発表した論文は、1つのタンパク質を、密接に関連するタンパク質に変換―進化論者が生命の歴史上容易に発生すると主張する類の変化―するには、少なくとも7回の突然変異が必要であることを発見した。6この研究によって、多くのタンパク質や酵素が持つ情報はあまりにも複雑かつ特殊であり、一般 的に想定されている進化の時間的尺度の中ではダーウィン的プロセスによって生じ得ないことが確認された。

さらにもうひとつ、アックスとゲイジャーの論文について特筆すべきことがある。この論文は、「インテリジェント・デザインが生命の信頼できる説明であるという主張の科学的メリットを検証するための主要なフォーラムになることを目指す」BIO-Complexity誌に掲載された。同誌はPhDを持つ二十名以上の科学者が生化学、進化計算、進化生物学、微生物学、分岐学、物理学などの分野の編集委員となり、独自の立場からIDをめぐる科学的議論に重要な貢献を果 たそうとしているようだ。

これらの研究所や個人の研究者たちは協力しながら、査読付きID派科学論文を、Protein Science、Journal of Molecular Biology、Theoretical Biology and Medical Modelling、Journal of Advanced Computational Intelligence and Intelligent Informatics、Quarterly Review of Biology、Cell Biology International、Rivista di Biologia/Biology Forum、Physics of Life Reviews、Annual Review of Geneticsなど多くの学術誌で発表している。総合的にみると、これら多数の研究はひとつの一致した意見に収斂 しようとしている。すなわち、複雑な生物学的特徴はダーウィン的メカニズムによっては生じ得ず、知的原因を必要とするということだ。

多くのID研究が発表されるにつれ、科学界で関心を持つ人が増えている。その多くが有望な若い科学者たちである。2007年以降、ディスカヴァリー研究所は夏季セミナーを主催している。そこでは自然科学や人文科学を専攻する世界中の大学生や大学院生が主要な理論家たちからIDを学んでいる。(詳細はwww.discovery.org/semを参照。)今日までに100人をはるかに超える学生_その多くは将来の教員や研究者である_がIDの明るい科学的展望について理解を深め、このプログラムを修了した。

IDのこれまでの実績は、それが科学界による真摯な検討に値する―そしてますます検討されるようになっている―ことを示している。このことは、過去数年間にID派研究会議が世界中で開催され、ID派科学者が遺伝学、生化学、工学、コンピューター科学などの分野における研究成果 を発表するようになったことにも表れている。

もちろん強硬なID批判者たちにはIDの科学的成功を認める気などない。3月のことだが、ジャーナリストのLauri Lebo(正真正銘のダーウィン・ロビー)が「ID研究などというものは存在せず、査読された正統な論文はまだ1本も執筆されていない」と宣言した。IDの研究プログラムの目的は、レボ女史のような説得不可能な批判者を説得することにあるのではない。むしろID研究は、心を開いた科学者たち―そして思慮深い一般 の人々―に、信頼でき、説得力があり、査読され、実験によってIDを支持するデータへの関心を持ってもらうことにある。そして実際にそのようなことが起きている。IDの科学的進歩によって、科学界の懐疑論者たちはますますIDに関心を払い、ID支持者とともに私的な科学会議に出席し、真摯な科学的対話を行うようになっている。ニューヨーク・タイムズやNCSE(全米科学教育センター)スタッフのブログ、あるいはジョーンズ判事の声明文を読んでも、それはわからないだろう。しかしIDはすでに、我々が揺籃期の(しかもきわめて資金不足の)科学分野に期待できるだけの科学的正統性を獲得している。科学的創造性によって道を切り拓いているIDの未来は明るいようだ。

ただ、いまだに頭上にキッツミラーの御旗を振りかざす人々はIDの進歩を決して認めないだろう。映画『カサブランカ』に登場するリックのように、彼らにはいつもドーヴァーの思い出があるのだ。

引用文献:
[1.] Michael J. Behe, "Experimental Evolution, Loss-of-Function Mutations, and 'The First Rule of Adaptive Evolution,'" The Quarterly Review of Biology, Vol. 85(4):1-27 (December 2010).
[2.] Michael Behe & David W. Snoke, "Simulating Evolution by Gene Duplication of Protein Features that Require Multiple Amino Acid Residues," Protein Science, Vol. 13 (2004).
[3.] Rick Durrett and Deena Schmidt, "Waiting for Two Mutations: With Applications to Regulatory Sequence Evolution and the Limits of Darwinian Evolution," Genetics, Vol. 180: 1501-1509 (November 2008).
[4.] Douglas D. Axe, "The Limits of Complex Adaptation: An Analysis Based on a Simple Model of Structured Bacterial Populations," BIO-Complexity, Vol. 2010(4):1-10.
[5.] Ann K. Gauger, Stephanie Ebnet, Pamela F. Fahey, and Ralph Seelke, "Reductive Evolution Can Prevent Populations from Taking Simple Adaptive Paths to High Fitness," BIO-Complexity, Vol. 2010 (2).
[6.] Ann K. Gauger & Douglas D. Axe, "The Evolutionary Accessibility of New Enzyme Functions: A Case Study from the Biotin Pathway," BIO-Complexity, Vol. 2011(1) (2011).

最新情報INDEX