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ダーウィン・ドグマが相変わらず生物教科書を支配

Casey Luskin
October 11, 2011

最新版の2011教科書評の一部、「22例の最新の生物教科書と〈進化のイコン〉の選択的使用評価」は、古典的な「イコン」の範疇に収まらない、興味ある教科書のコメントがないかを調べた。 ここで私はこうしたコメントのいくつかを論評したいと思うが、それは多くの教科書の進化の不正確で偏った扱いを説明することになる。

偽りの批判的思考訓練

多くの調査された教科書は、「偽りの批判的思考訓練」とでも呼びたくなるものを含んでいいて、学生は証拠を調べるように求められているが、それは一方向的なやり方においてである。

例えば、CampbellとReeceの2009年版Biology: Concepts and Connectionsは学生に、「進化の証拠の種類にはどんなものがあるか、手短にまとめてみよう」(p.275)とある。進化論に不利な証拠をあげてみよという要求はなされていないが、それは、このテキストにそんな証拠の記載が全くないからである。

同様に、Prentice Hall社の2009年版Science Explorer: Life Scienceはこう述べている――

証拠となるものを確かめること――証拠は、テストや観察によって確かめることので きる事実からなっている。この本を読みながら、進化論の証拠となるものをあげてみなさい。」(p.182)

もちろんこの教科書は、進化論に反する証拠にどんなものがあるか、とは問わない。そんなものはそこから排除されているからである。

2006年版Glencoe社のBiology: The Dynamics of Lifeは、進化についての証拠の「強みと弱み」(p.402)を見極めるように学生に求めている点で珍しい例である。しかしこの教科書はダーウィン支持の観点を打ち出すだけで、「現代進化論は生物学における基本的な概念である」とさえ述べている。これに異論を唱える多くの科学者の声が全く無視されているのに、どうして学生が進化論の「弱み」を評価することができようか?

必ずしもすべての教科書が、ダーウィニズムに同意しない科学者がいる事実を、学生に全く隠しているわけではない。Belk とMaierのBiology: Science for Lifeは、半ページを費やして、ディスカヴァリー研究所の「ダーウィンに対する反対者」リストを攻撃している。この批判は、ダーウィニズムへの反論を批判する「物のわかった学生」(savvy student)を褒めることによって、「物のわかった読者」として学生にへつらい、一方、ダーウィニズムへの科学的反論の存在を無視するように学生を誘導している(p.251)。この「物のわかった読者」というセクションが、証拠を調べたうえで自分の意見を形成するより、権威者の言うことを受け入れなさいと、学生に求めているのは明らかである。少なくとも学生にとって、それは有難いことであろう。多数意見に同意するだけで「物わかりがよい」とみなしてもらえるのだから。

進化論を最初から押しつける

ほとんどの教科書は論理的順序を尊重している。最初に科学とは何かを教え、それから細胞やDNAへと進む。マクロ生物学について多少の知識を与えたうえで、著者は進化のようなより複雑な問題を、通 常は本の真ん中から終りあたりで導入している。何といっても、細胞、染色体、DNA、遺伝の基礎などについて学んだうえでなければ、ダーウィン進化論といった問題を学生が理解することはできないからである。

しかし中には、進化論を押し出すことに熱心なあまり、教育学的に言って非論理的なやり方でこの教材を持ち出す教科書がある。例えばGeorge B. JohnsonのEssentials of the Living Worldは、ダーウィン進化論をどうしても推進するために「進化と生態学」の問題の2章を当てている――学生が(先に学ぶべき)生命の化学の章にまだ到達していないのに、である。

同様に、2006年版BSCS Biology: A Human Approachは、きわめて異常な構成になっている。この本の最初のセクションの第1章のまさに最初の講義が、人間の猿からの進化を強調している。学生は、人間は他の霊長類から進化してきたことを、まだ細胞とは何かさえ知る前に学ぶことを期待されている

この教科書はあまりにも非論理的なので、ある匿名の公立学校教師でこれを使用するよう強制された人が、私に次のように語った――

私のこれまで用いてきたBSCSの他の教科書は推薦してもよいものですが、この本だけは教育学的・学問的な問題を引き起こしました。私の(進化論支持の)同僚も私も、教科書がのっけから、人間は霊長類から進化したという主張で始まるというのは、不適切だと考えました。これは2つの理由で異常です。

まずこれは出発点として異常です。なぜなら、学生がまだ細胞とかDNAといった根底にある基本的な生物学的学習をする前に、進化生物学を紹介するのは、時期尚早と思われるからです。もし進化を担うものがDNAの変異だというなら、学生は少なくとも進化を勉強する前に、まずそのあたりのことを知っておく必要があります。

もう一つは、全学習過程でも、最も盛んな論争のある問題から始めたために、学生の間に論争と分裂が起りました。これは私が、その学年を最後まで、学生に興味を持たせながら指導していくための大事な時なのです。進化論に賛成だろうが反対だろうが、教科書の初めに、人間は霊長類の子孫だというような、最も論争の対象となる問題を扱う章をもってくるのは、必要でもなく賢明でもないでしょう。この点でも、そう考えるのは私だけでなく、進化論を支持する私の同僚もそうなのです。すぐれた教師なら誰でも、年間を通 して学生と親しくなり、興奮と熱意を起こさせなければならない学年始めに、最も論争のある問題を取り上げるべきでないことを知っています。

この教科書はまずい方針を取りました。著者たちは、理にかなった教育学を無視するのみならず、学生が学年の初めに踏み込む問題についての見解の多様性への配慮を欠くものです。

明らかにしておきたい点が一つある。それは、このダーウィンに疑問をもつ生物教師が、学生に進化論を教えることを拒否したわけでなく、ちゃんと教えたことである。にもかかわらず、最初の授業から「人間は下等な霊長類から進化した」という考えを学生に無理やり呑み込ませることによって、この教科書は、学習経験を台無しにしたのである。

ダーウィンへの合意を学生に強いる

少なくとも1つの教科書が、学生は進化論を学ぶべきだと言うだけでなく、それに合意することを要求している。Sylvia MaderのEssentials of Biologyは、「なぜ進化論はもはや仮説とは考えられていないかを説明せよ」と要求し、テキスト自身がこう答えている――「進化論は多くの多様な独立した証拠の系列によって支持されている。」(p.225)4頁あとには多選択肢の質問が設けられ、学生は、進化論は多くの証拠の系列によって支持されている、と答えるように要求されている。

進化論は、
(a)化石記録のデータによって支持されているので仮説と考えられている。
(b)多くの種類のデータによって支持されているので仮説と考えられている。
(c)化石記録のデータによって支持されているので学説と考えられている。
(d)多くの種類のデータによって支えられているので学説と考えられている。

もちろん225頁の質問から、正しい答えは(d)なのだろうとわかる。そしてこの答えは、進化論が「多くの種類のデータによって支持されている」と主張することを学生に強要する。しかしどの選択肢も、進化論が「支持されている」という見解に合意するように強制している。学生は、ネオダーウィン進化論に科学的に異議を表明することを許されてはいない。

学生たちに注意、ダーウィンの枠内で考えるようにせよ
2010年版Ken MillerとJoseph LevineのBiology は、共著者リーヴァイン自身のダーウィン進化論賛歌を引用している――

ダーウィンの自然選択による進化論は、しばしば「人間のもった最も重要な科学的考え方」と呼ばれている。進化論は生命の統一性と多様性の最上の科学的説明を与える。それは全ての生き物を一本の生命の木に統合し、人間は自然の一部であることを我々に気づかせる。研究者たちが進化の神秘を探究するとき、彼らは常にダーウィンの天才と自然界についての彼の壮大なビジョンに驚嘆する。(p.447)

これが実に皮肉な文章であるのは、この本の数頁前で著者たちが次のように言っているからである――「すぐれた科学者は懐疑家である。ということは彼らが既存の考え方や仮説を疑うということである。」また「科学者は開かれた心をもたなければならない。その意味は、自分の仮説と合わない異なった考え方を喜んで受け入れるということである。」いったい、彼らがこのようなアプローチを、進化論に対して取っているように見えるだろうか?

また同様に、フツイマの2005年版教科書Evolutionは、「全ての生物の、共通 祖先からの変化を伴う血統的下降は・・・物質の原子構造や地球の太陽の周りの回転と同じく、科学的事実である。」(p.523) 皮肉なことにこの教科書は後の方で、「科学は仮の(tentative)ものだ」と言っている。(p.542) では彼らが進化論をあたかも真理であるかのように教えている事実はどうなる?

この報告の全文“An Evaluation of 22 Recent Biology Textbooks and Their Use of Selected Icons of Evolution”はここ(リンク)で見られる。

(引用した教科書の一覧表は省略。)

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