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NYタイムズ、哲学誌SyntheseのID侮辱特集を報道

Casey Luskin
May 20, 2011

(本欄1/19「哲学誌SyntheseのID特集における傲慢、嘲笑、あからさまな曲解」参照)

今年初め我々は、一部の主導的なインテリジェント・デザイン(ID)批判者が、哲学雑誌Syntheseの特集を組んで、IDを攻撃するために、嘲笑、動機の邪推、関連による断罪、その他の誤った議論を用いている事実について論じた。例えば、IDは「非合理」または「理性の病状」を示すもので、それは大学人が「戦う」べき「脅威」であり、大学人が「引き抜く」べき「雑草」だと言う。IDに反対するためには「もっと叩け」(Bash Harder)と提議する論文もある。IDの本当の議論は恒常的に誤って伝えられ、真剣に取り組もうとする姿勢はない。(私の言っていることをもっと知りたい方は、ここ、ここ、あるいはここ(リンク)をご覧あれ。)我々はまた最近、Syntheseの編集主幹たち(彼らがこの特集を組んだのではない)が、高い学者的基準をもつ人々で、次のような「お断り」を折り込まざるを得なかったことも述べた(リンク)。

SYNTHESE編集主幹一同よりの声明

この特別号は、現在活発に論争の行われているある問題を、しばしば激しい表現を伴う見解によって扱っています。私たちは、この号の論文のいくつかは、他者の見解の冷静で知的な扱いと、標的とする著者やグループを頭から退ける議論との、区別 を弁えない語調を用いていると考えています。


私たちは、精力的な論争は知的社会において明らかに不可欠なもので、激しい反対の表明さえ進歩の動力となりうると信じています。しかしながら語調や文章は、言葉選びの礼儀と敬意を弁えた、通 常の学問世界の基準に従うべきです。私たちは、この特集号については一貫してこれらの条件が守られていないと認識しています。とりわけ我々が根底から同意できない人々にこうした基準を適用することは、我々すべてにとって共通 の利益となるものです。どんな形でも我々の通常の礼儀を踏み外すことを、我々は遺憾とするものです。

Jonathan van Renthem
Vincent F. Hendricks
John Symons
Editors-in-Chief/SYNTHESE

ではいったい、ジンテーゼ誌の反ID企画をしたのは誰か? それはNCSE(全米科学教育センター、反IDの総本山)のGlenn Branch と、9・11政府陰謀説の論者としてニューヨーク・タイムズが報じた(リンク)哲学者James Fetzerとの共同編集によるものである。彼らはジンテーゼ誌の編集主幹団に手紙を送り、編集主幹が方針に逆らってでも、Synthese反ID特集号全体に見られる論調の非礼なスタイルは、IDに反対する目的のためなら許されるべきだ、という態度を取らなかったことに対して、あからさまな不快の感情を示した。

ブランチは、フェッツァーの9・11政府陰謀説には与しないと言っているが、反ID特集に関係した人々が、ジンテーゼ誌主幹がなぜ遺憾を表明したかを説明するのに、さっそく陰謀説をねつ造したのは注目に値する。彼らは、ジンテーゼ誌のような声望ある学術誌が、主導的ID批判者の非礼な言辞に遺憾の意を表明するのは、ID唱道者からの圧力が絡んだ何らかの陰謀があったとしか考えられないという説を唱えた。

例えば、この号の特に非礼な論文の1つを書いたJohn S. Wilkinsは、あとから反IDサイトPandasThumbに、「ジンテーゼ誌はインテリジェント・デザインの圧力に屈したのか?」という記事を書き、「おそらく法的手段の脅しがこの雑誌または編集者に対してあったのだろう」と言っている。

同様に、Barbara Forrest (反ID号への寄稿者の一人)も、なぜこの有力な学術雑誌の編集主幹には、ID唱道者の宗教的信念と動機に焦点を当てた彼女の論文が不快だったのかを説明するのに、陰謀説を唱えている。フォレストは、かつてある地方議会で「ディスカヴァリー研究所はあなたの行動の一つひとつを見張っている」(リンク)と証言した人だが、彼女は、この雑誌が彼女を裏切るようにした運動の背後には、William Dembskiがいると信じているようだ。

ところが最近、ニューヨーク・タイムズがこの話を取り上げ(リンク)、デムスキーのようなID唱道者からの、そのような圧力の証拠はないと報道した。実際、この特集号の礼儀について苦情を唱えた数人の人々は、各個ばらばらにそうしたらしく、必ずしもIDの唱道者でさえなかった。ニューヨーク・タイムズ(May 13, 2011)の「インテリジェント・デザイン論争の罠にはめられたある学術誌」という記事で、Mark Oppenheimerはこう言っている――

フォレスト博士は最近、インテリジェント・デザイン理論家のウィリアム・A・デム  スキーが「これに関与しているのは、彼の書いたものに私の論文が挙げられていることからも推測できる」と言った。電話で尋ねると、デムスキー博士はジンテーゼ誌と接触したことはないと言い、この雑誌に働きかけるどんな特定の運動も知らないと言った。

「きっと何らかの圧力が彼らにかかったのだと思うが、どこからのものか私にはわか らない」とデムスキー博士は言った。

しかし3人の哲学者が、フォレスト博士の論文に対する弁明らしきものを公表した編集者に接触したことを認めた。一人はノートルダムのキリスト教哲学者Alvin Plantingaで、彼は2年前に編集者にメールを送っていた。

「私は、彼女の論文は、Syntheseの通常の学問的礼儀に完全にもとるものだと考えた」とこの木曜日、彼は言った。「それは人身攻撃とあてこすりに終始するもので、Beckwithの言っている内容はすべて軽くあしらっている。」

2009年5月、カルヴィン大学の哲学者Kelly James Clarkもまた、Syntheseに手紙を書いた。「私はインテリジェント・デザインを拒否する者で、合衆国の学校で教えられるべきものとは思わないが」と彼は2009年5月5日のメールで言い、プランティンガ博士と同様、クラーク博士もSyntheseの「人身攻撃」を非難している。

この論文の対象となった当のベックウィズ博士もまた、2000年に編集者に手紙を書いている。

「2日間というもの、私は本当に落ち込んでいました」と彼は電話で答えた。彼は、誹謗中傷あるいは関係による断罪と思えるものに当惑した。彼は編集者に手紙を書いたが、自分のために苦情を言ってくれと誰にも頼みはしなかったと言う。「私はこの人たちをよく知っているわけではないが、これだけ有名な哲学者たちが私の弁護のために立ちあがってくれたことに、本当に感激しました。」

そこでどうやら、Syntheseの編集者たちが、フォレストやその他NCSEに率いられたID批判者たちの用いた非礼なやり方に遺憾の意を表明した理由は、ID唱道者からの圧力の絡んだ悪辣な陰謀によるものではなかったようである。それは単純に、ID批判者たちの論じ方が礼儀を弁えないものであり、それはこの学術誌の編集者や他のIDを支持しない学者にとってさえ、不快なものだったという理由によるものである。

なぜ人は陰謀説をでっちあげるのだろうか? 人々はしばしば、名誉を挫かれ地位 が危険にさらされているが、自分が間違っていたという可能性を認めたくない(あるいは政治的にそれができない)と感じた時に、陰謀説を作り上げるのである。このような説はしばしば、敵を作り出しその敵を非難すべきものとすることによって、体面 を繕おうとする試みである。

おそらく、想像力たくましい(そして私が知る限り、完全に全面 的に虚偽の!)検閲の圧力とか、デムスキーや他のID派からの法的措置の脅しといった陰謀説を信ずる方が、ひょっとしたら自分たちのやり方は礼儀と理性を弁えた平均的学者にとって不快かもしれないと考えるより、これら批判派には考えやすいのであろう。しかしこの問題全体が、一人のNCSE指導者ともう一人の9・11政府陰謀説を唱える人物によって仕組まれたものであることを考えれば、彼らの陰謀説作りも、非礼や間違いの事実を認めようとしない態度も、さして驚くほどでもないであろう。

英ガーディアン紙のある論評は、この問題の張本人である反ID学者たちは、IDを攻撃しようとする「ヒステリーに近い論調」によって「逆毛を立てている」(swept up)と評している。この理論は本当にそれほど信ずるのが難しいだろうか? 

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