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マッシモ・ピグリウッチはIDの研究を無視して言う:「DNAのランダムな変化が新しい情報を創造する」

Casey Luskin
February 18, 2011

Massimo PigliucciによるEMPO Reports(European Molecular Biology Organization発行)に発表された論文が、「ある人々の間では〈情報〉は魔法の言葉であるようだ。例えばID唱道者のビル・デムスキーは、進化論は新しい情報の出現を説明することができないと繰り返し言っている」と述べている。「魔法の」という不適切な語を除けば、ピグリウッチのデムスキー評は妥当で正確である。ピグリウッチはデムスキーを、世界の最も権威ある科学誌の一つで“ビル”と呼ぶほど親しい間柄のようだが、彼は情報の起源についてのデムスキーの話をこう説明しようとする――

デムスキーのような人たちの情報と進化論についての主張に関して言えば、DNAに蓄えられるような生物学的情報は、たえず創造されたり破壊されたりしていることは、よく理解された事実である。例えばある特定の生物の死とともに破壊がやってくる。このことは従って、この生物のエントロピー・レベルの突然の増大を意味する。情報の創造や変化は、DNAの変異、すなわち分子の構造にランダムな変化が生ずるたびに起こっている。再び言うが魔法のようなことは何も起こっておらず、超自然だろうと何だろうと、そこに意識ある何ものかが入ってくる必要は全くない。(“What about information?” EMBO Report, Vol. 12:92 (February, 2011).)

ピグリウッチは多くのレベルでポイントを捉え損ねている。もちろんどんなID論者も、物的な原因が情報を破壊しうることを否定する者はいない。こんなことは言う必要のない当然のことだ。

しかし新しい情報はどこからくるのか? ピグリウッチによれば答えは簡単である。つまりDNA分子の「ランダムな変化」である。

ランダムな変異が、DNAの重要でない変化を生み出すことはありうるだろう。しかしそのようなランダムな変異が、機能する新しい情報を生み出すことができるのか? 

人は一日中「スクラブル」文字を袋から取り出しては並べ、これを「情報」と呼ぶことはできる。しかしこれらの文字が単語を形成しなければ、この情報は役に立たない。DNAに「ランダムな変化」をもたらす能力が変異にあるとしても、その情報が何かの機能を果 たさない限り、それは完全に無意味である。

生物学的情報はその機能を尺度とすべきであって、単なるDNAの配列によってではないことに他の科学者も合意している。2003年、ノーベル賞を得た生命起源研究者Jack Szostakはネイチャー誌にレビュー論文を書き、「古典的な情報理論」の問題は、「メッセージの意味を考えないことだ」と言い、情報を「単に紐を特定し、蓄え、伝達するのに要求されるもの」と定義していることだ、と苦言を呈している。スツォスタックによれば、「情報――機能する情報――の新しい尺度が求められているのは」ある特定のタンパク質配列がある特定の機能を果 たす能力が問題だからである。

スツォスタックは2007年、カーネギー研究所の生命起源理論家Robert Hazenその他の科学者と共同でProceedings of the National Academy of Sciencesに論文を発表し、こうした議論をさらに発展させている。古典的情報理論の時代遅れの道具を使って生物学的複雑性の尺度を考えようとする人々を攻撃して、スツォスタックと共著者はこう書いている――「複雑性の尺度は、もしその概念的枠組みと予言能力が複雑なシステムの振舞のより深い理解をもたらさないならば、ほとんど何の役にも立たない。」したがって彼らは、「機能する情報、特定の機能をコードするのに要求される情報、という観点からあるシステムの複雑性の尺度を求めること」を提案する。

この新しい機能する情報はどこからくるのか?

ピグリウッチは、ランダムな変異に働きかける自然選択がそれを生み出すことができると言う。しかし彼はこれが真理だと言うだけである。単に仮定をするより、テストしてみようではないか。Douglas Axeの、BIO-Complexityに発表した最近の論文は、ある特定の生物学的機能が進化によって生ずるのに、ほんの6つかそこらの変異が起こればよい場合、最大の確率的能力限度を考慮すれば、そのような機能が生命の歴史において生ずることは不可能であることを示した。すべてのレベルの機能する情報が、ランダムな変異と自然選択の及ぶ範囲内にあるのではないようなのだ。

これらの結果はアックスのそれ以前の仕事と一致する。ケンブリッジ大学の学位 取得後フェロウとしてアックスは、酵素の変異受け入れやすさのテストを行い、アミノ酸配列が機能するタンパク質の折りたたみを生み出す確率を割り出した。彼はこの研究をJournal of Molecular Biologyに発表し、アミノ酸配列が機能するタンパク質の折りたたみを作り出す確率は10の77乗分の1という稀さであることを示した。彼はこの数値のもつ意味を次のように説明している――

私は、機能する酵素を形成するようになっている配列がいかに稀かを示す、一つの数値を出すのに用いられた実験データを報告した。報告された数字は、兆を6回掛け合わせた分の1より小さい。そう、ここでもやはり、発見された事実は偶然の能力を疑問に付し、確実にインテリジェント・デザインの説得力を増すものである。

明らかにデムスキーがピグリウッチの思考パターンに影響を与えているのだから、なぜピグリウッチは、情報の起源にインテリジェンスが要求されることを示すデムスキーのピア・レビューされた研究を、一つも調べようとしないのだろうか? もしピグリウッチが、新しい複雑な情報の起源についてのIDの考え方を批評するつもりなら、なぜ彼は、ID陣営の関連する研究を何ひとつ、挙げようとしないのだろうか? 実はピグリウッチは、彼自身の計画をもっていることが分かっている。

「オクラホマ科学教育振興会」というグループがAnti-Wedge Plan(対wedge 計画、wedgeはIDが進化論に打ち込むクサビのこと)と呼ぶものの中で、ピグリウッチはある政治的な戦略を提案し、これを「公立校の科学教育カリキュラムにおける創造論とインテリジェント・デザインに対抗する、多角的で長期的な戦略」と説明している。「対wedgeドキュメント」によれば、科学者は進化論を「すべての生物科学の基本的な概念的枠組み」として防衛しなければならないことになっている。

これでピグリウッチのENBO Journalにおける舌足らずの議論が、なるほどと分かってくる。彼は他者を、政治的動機をもっているとして非難するであろうが、彼自身がそういう動機をもっていることは明らかである。ピグリウッチのインテリジェント・デザインに対する怨恨は、彼の論文のこの結論的コメントによく現れている――「情報には何も神秘的なものはない。だから唯物論を打ち負かすのにこの概念を持ち出すことはできない。」

ピグリウッチの言う通りである。情報やその起源に何も神秘的なものはない。我々は新しい機能する生物学的情報がどこからくるのかを正確に知っている。ピグリウッチにとって問題は、その出所が物的原因ではないということだ。その出所はインテリジェンスである。

ここに「魔法」めいたものがあるとすれば、それはランダムな変化が複雑な多重変異による特性を生み出すことができるという主張だ。それは誰一人答えた者のいない問題である。

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