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ダーウィンの夢からの覚醒――現代の野蛮を論じたR・M・ウィーバー

David Klinghoffer
May 25, 2010

(注:これはこのテーマについて6回に分けて掲載された記事の最終回分。故Richard M. Weaver(1910-1963)は、シカゴ大学の英語教授で、現代レトリックについての権威者、20世紀中葉の保守主義の形成者として知られる。)

かつて政治的・哲学的保守主義は、現実的な日々の政治問題というよりも、現代文明の批判を展開することに向けられ、文化を野蛮性から救うことを目的としていた。今回で終るこの記事で我々は、文化的崩壊へ向かう趨勢に寄与する要因としてのダーウィニズムについて、リチャード・ウィーバーの考え方を見てきた。

今日、保守派の政治的反省の最も広く尊敬されているご意見番といえばGeorge WillやCharles Krauthammerだが、彼らは信頼されるダーウィン弁護者で、ダーウィンに疑念をもつ者の敵である。そうした今日のありさまについては、これ以上言わない。1948年の『思想は結果 を伴う』(Ideas Have Consequences)で登場したウィーバーによって始まった運動は、そういうものではなかった。

ウィーバーは、ダーウィンに導かれる「世界像」あるいはヴィジョン、「形而上学的夢」と彼の言ったものの文化的代価をはっきり見据え、警告していた。そして進化論の科学的批判の仕方について示唆していた。クラウトハンマーやウィルとは違い、しかしBuckleyやKristolやNeuhausにより近い立場で、彼はダーウィニズムを引き倒そうとする今日の計画の重要さを、十分に把握し理解したであろう。

彼の考えによれば、保守主義者の第一の役割は、民主党の要職にある者を論破したり、リベラルな立法に反対することではなかった。それは近代まで支配的であった統合された夢やヴィジョンを、どうにかして取り戻すことであった。それこそが、保守主義者だけでなく万人にとって重要な、また重要であるべき問題であった。ウィーバーは、現代の分裂したヴィジョンが我々の精神の健康に悪いことを見抜いていた。これが彼の時代に、そして今日ではそれ以上に、神経症、絶望、不安、鬱、ヒステリーといったものが多く見られる原因であった。

患者に健康を取り戻すためには、保守主義の目標とすべきは「敬虔」を取り戻すこと、ただし特定の宗教に向かうことでなく、歴史や伝統、先祖、また自然に対する尊重と畏敬の念を取り戻すことであった。自然についてはこう言っている――「現代に支配的な態度は…実体を否定し(注、唯名論の立場)、そのことによって創造の正当性を否定する異端の形態である。(現代人は)親殺しである。彼は、かつて人々が親に対する尊敬の念で接してきたものに武器をもって立ち向かい、効果 的に殺してしまった。」

宗教の純粋・真率性、当然性、信ぴょう性の感覚が粉砕され、ニセの神々に置き換えられた。たとえ人がそのような純粋な「敬虔」の見方を自分では相続し、または獲得したと思っていても、用心し思い違いをしてはならない。保守主義者も宗教的な人々も含めて我々みんなが、ダーウィン――そして19世紀唯物主義のマルクス、フロイトなど――の分裂した夢の影響下に生きているのであれば、我々は当面 は、我々の先祖と同じように信仰に関する物事を見ることはできないかもしれない。ウィーバーは「(悪)夢」について語った。そして夢とは、そこから覚めるのが難しい何ものかである。人は夢から覚めたと思っていても、実際は夢を見続けているのかもしれない。

一つの夢から覚めてもう一つの夢の中に入ろうとすることは、面 白いことに、旧約聖書の「詩編」が救いの曖昧さを捉えている部分に相当する――「主がシオンの追放者を連れ戻されるとき、我々は夢見る者のようであるだろう。そのとき我々の口は笑いに満ち、我々の舌は喜びの歌に満ちるであろう」(126:1−2)。この言い方は、夢は救われる前だったのか、それともそれは救いそのものなのか、両方の解釈を許容するだろう。

C・S・ルイスは『栄光の重み』の中で、これを呪文に置き換えている。「あなたは私が呪文を織り出そうとしていると思うだろうか? 多分その通 りだ」と彼は書いている――

しかしおとぎ話のことを思い出すがよい。呪文は呪縛をかけるためにも、それを解くためにも用いられる。そしてあなたも私も、ここ百年近く我々にかけられていた世俗という悪なる呪縛から目覚めるためには、ありうる呪文の最も強力なものを必要とするのである。

唯物論的な物の見方を脱することは、単なる一般 的な哲学的計画ではない。それはもちろん単なる政治的計画でもない。それは個人的な、我々一人ひとりにとって深刻な重要性をもつ挑戦、簡単にいくとは考えられない挑戦なのである。

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