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ベアリンスキーとある名を言えない反対者の話
―ベヴァリー・ヒルズ討論会にて

David Klinghoffer
October 30, 2009

火曜夜、ベヴァリー・ヒルズ図書館においてベアリンスキーが、宗教・反宗教双方の立場の雑多な聴衆の前でスピーチを行い、一人の無神論者と彼とのやり取りがあったとき、私はある生涯で初めての体験をした。

人々や出来事について書くジャーナリストとして、私はしばしばある人の名前を変えたり伏せたりして、誰であるか分からないようにする機会がよくあった。ほとんど常にこれは、当該人物が私の物語に登場したいと頼んだわけでもなく、公的人物でも、そうなりたいと願っているのでもなく、何かひどく非難されるようなことをしたのでもなく、自分の言葉や行動を公にされれば当惑すると思われる人々だったからだ。ここでも私は彼の名を伏せることにする。火曜日、この二人のやり取りを聞きながら、私はこれまでの経験で初めて、ある人が自分では名をあげたいと思っているのだが、しかしもし私がこの報告で彼の名や所属機関を明かしたら酷なことになろうと思われる場面 に遭遇した。

デイヴィド・ベアリンスキーに立ち向かった無神論者がその人物である。失礼だが、この人は思想家としても論客としても弁論でも、とうてい太刀打ちできない人であったから、私は彼の名を明かす気にはなれない。彼の名はGoogle Alertにはおそらく出ているだろう。たとえ彼が全く自分の意思で、自分の無信仰を弁護するためにベアリンスキーに立ち向かうことを選んだのだとしても、私は彼の当惑に追い打ちをかけるようなことはしたくない。

この討論会のスポンサーは、あの精力的で伝染性の熱意をもったAmerican Freedom AllianceのAvi Davisであった。ベアリンスキー博士がまず最初に話したが、いつも通 り驚くほど雄弁であった。彼はまず「ダーウィン論争」と言われているものを別 の見方をすることから始めた。両陣営をいがみ合うものとして、「西洋文明」の味方か敵かとして対峙させるよりも、彼は寛大にも、こうした物の見方の相違を、公海上で同じ救命ボートに乗り合わせた乗客の間の論争として捉えてみせた。我々の文明は大海で沈もうとしている船なのだ。我々はみんな、無神論者も不可知論者も宗教信者もこのひどいことになった船から水を掻い出そうとしている。この問題はどうしたら我々全員を救うことができるかということだ。ここには敵はいないのだ。

ベアリンスキーはさらに続けて、トマス・アクイナスの強力な無神論の主張と、アクイナス自身のそれに対する反論を要約した。彼は存在の神秘、宇宙や物質や生命の起源の神秘について述べ、ダーウィンへの反論を特に強調はしなかった。このあと質疑応答のとき、一人の質問者が躊躇しながら話しかけた。「ミスター・ベアリンスキー、あなたはとても雄弁なので公衆の前で自分の考えを述べるのに気後れしますが…」

そこで質問者は立ち上がった。「ここでの話題が宇宙の起源の話になるとは思いませんでしたよ。私はもっと別 のことが知りたかった。」

「今からでも遅くないぞ!」と聴衆の中から誰かが大声で言った。

「宇宙がどうしてできたかという問題はちょっと難しい」と彼は続けた。ここから先は、彼は坂道を下るようにまくし立てた。

「私はそれとは別のちょっとした考えをもっています」と彼は後から言った。彼は、例えばプロスポーツの選手が得点したりうまくやったときにする、勝ち誇って天を指差すしぐさを見ていると、無神論者でいることがいかに難しいかを痛感すると愚痴をこぼした。

「無神論者たちは、何世紀も何世紀もの間、多くのたわごと(a lot of crap)を口にしてきたのです」と彼は嘆いた。「あなたが無神論者でなければ、それが長い間にはどんなにgratingな(ギスギスした、嫌な感じの)ことかわからないでしょう。」

私は彼の話を聞く間じゅう、彼のために汗をかいていた――無神論の伝道者に対してこれほどの同情と仲間感情を抱いたのは、おそらく私は初めてのことだった。

これは私にダビデとゴリアテの話を思い出させた――ちょっと改変したものだが。聖書の話では、恐れをなしたイスラエルびとが、この巨人と戦うべく自分たちの戦士の一人を差し出すことを拒絶する。しかし彼らは、少年ダビデが自ら買って出たのを、一気に潰されると予想しながらも喜ぶ。この場合もまた、有名な無神論の戦士たち(ドーキンズのような)がベアリンスキーやスティーヴン・マイヤーやマイケル・ビーヒーなどの挑戦を受けて立つ勇気が全くなかった。しかし彼らはこの気の毒な男が、巨人に立ち向かうのを見て喜んだであろう。

もちろんこの聖書の物語の結末は、火曜日の夜、ベヴァリー・ヒルズ図書館で起こったのとは全く違った展開になるのではあるが…。

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