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デザインされた宇宙を論ずるID支持ピアレビュー論文

Casey Luskin
February 6, 2012

科学誌International Journal of Design & Nature and Ecodynamicsは、「自然と、その現代科学思想やデザインに対する意味など、多様な研究分野に携わる世界の研究者たちのための交流の場」となることを目指している。Wessex Institute of Technology出版部の発行するこの雑誌は、生態学的生物模倣(biomimetics)に重点を置いている――「特に生態力学は、継続しうる開発への満足のいく解決を得るための、エコシステムの進化熱力学との関連を研究する。」

この雑誌の編集者と編集委員会には、MIT、Duke大学、東京大学、Exeter大学、ボローニア大学、ケルン大学、Georgia Techなど、15ヶ国の40以上の研究機関の科学者や工学者が入っている。この雑誌は最近、ID支持の論文を2編発表しているが、雑誌自体がIDに友好的であるかどうか直接の証拠を私はもたない。しかしどうやらこの雑誌に関係する何人かの信頼すべき人々が、IDにも良い所があるかもしれないと感じたらしく、IDの主張に共鳴するいくつかの論文を載せている。

そういった論文の1つ“The Coherence of an Engineered World”(工学的に作られた世界の整合性)は、工学教授Dominic Halsmerが代表著者となっている。我々はこの論文をすでに、ここ(リンク)、ここ(リンク)、ここ(リンク)で論評している。この論文の主張は、我々が宇宙を見まわすと、「その工学技術のレベルは現在の人間の能力をはるか超越するもの、あるいは現実を超越したもの(transcendent)にみえる」というものである。この論文は、宇宙が生命のために微調整されていること、その証拠の例として、水の特性、生命に必要な元素(水素、酸素、炭素など)が優勢であること、宇宙の膨張率、またディスカヴァリー研究所上級研究員Guillermo Gonzalezの開発した「銀河生活可能ゾーン」などの、特権的惑星の議論を引いている。

この雑誌には、Leeds大学の熱力学および燃焼理論教授Andy McIntoshの2つのID支持論文が発表されている。彼の最初の論文“Information and Entropy: Top-Down or Bottom-Up Development in Living Systems”は2009年に発表され、我々はこれを論評している(リンク)。この論文は、IDの考え方の鍵となる問題を探究しIDの正しさを保証している――

起源問題における究極の問題は、「情報は、純粋に唯物論的または自然主義的な方法で増えることができるか?」ということでなければならない。情報はこの方法で生じたのでなければならないと単純に決め込むのは、感心できる態度ではない。デザインの起源の別 の考え方が許容され、すべての選択肢が注意深く調べられなければならない。

マッキントッシュの主張は2つある。第一に彼は、機械というものを自由エネルギーのレベルを局所的に高める仕掛けと定義し、細胞は還元不能な複雑さをもつ機械に満ちていると論ずる――

すべてこれらの機能する部品は、生きた細胞の基本的な形態を働かせるために必要とされる。…これはビーヒーの還元不能の議論を繰り返すことだと言ってもいい。この論争は、バクテリアの鞭毛の回転モーターの起源を「タイプ3分泌システム」の発達したものとして説明しようとするPallen とMatzkeの論文によって、決着したと多くの人は考えている。しかしこの議論は健全ではない。理由は単純で、この2つのメカニズムは、他方の遺伝的枠組みの中に明らかに存在しない、いくつかの特徴を確実にもっているからだ。すなわち証拠は現実に、一方が他方の祖先であることを示すどころか、両方とも還元不能に複雑であることを示している。私の考えでは、この議論は依然としてきわめて強力である。

第二に彼は、このような機械が機能するためには、コンピューターのようなコードの形の情報を必要とすると論じている。マッキントッシュの見方では、分子機械を理解する唯一の方法は、それらを動かす情報が非物質的で、局所的な物質とエネルギーが非平衡状態であるように熱力学を束縛していると理解することだ。彼は、この情報は「トップダウン」的に生ずるのでなければならず、インテリジェンスの入力を要求するものだと言う――

トップダウン的に考える完全に整合性ある見方があるのであって、そこでは、フェノタイプの(従来のボトムアップの考え方による発現前の形でない)動物に既に存在する生物学的情報が、生物を構成する物質とエネルギーのシステムを強制し、複雑な非平衡的な化学過程をたどらせる。これらの過程はすべて熱力学法則に従いながら、内部に存在するコードされたソフトウェアを常にサポートしている。外からのインテリジェンスがそこに加えられなければ、物質とエネルギーだけで自動組織化や機械作用を生み出すことはできない。この後者の主張は、現に繰り返し実験的観察によって証明されている――新しい機械はインテリジェンスを要求する。そして生物学的システムにおけるインテリジェンスは、DNAの非物質的な指令から来ている。
マッキントッシュはこの論文を、明確なインテリジェント・デザイン支持の言葉で結んでいる――「この論文の含意するところは、いわゆるインテリジェント・デザイン理論――情報を生物システムの中に入力するためにはインテリジェント・デザイナーが必要だという考え――をサポートすることである。」

マッキントッシュのもう一つの論文は、やはりこの雑誌に出た“Evidence of design in bird feathers and avian respiration”(鳥類の羽と呼吸のデザインの証拠)というもので、これは私たちがすでに論評した(リンク)。彼はこの論文で、鳥の飛翔に肝要な2つのシステム――羽と呼吸システム――は「還元不能の複雑性」を示すものだと主張する。

機能をもつシステムが働く機械として作動するためには、すべての必要な部品がその場所にあって効果 を発揮するのでなければならない。その一つでも欠ければ、システム全体が役立たなくなる。デザインを推定するのは、この論文における鳥の羽や呼吸に関するように、それが証拠をもって提出されるときには、最も自然なことである。

羽の構造に関して、彼は、羽が正しく機能し飛翔を可能にするためには、barbs, barbules hooks, catchesといった多くの特徴が揃っていなければならないと主張する。

鳥の呼吸システムに関しては、マッキントッシュは、爬虫類の呼吸システムから鳥のデザインへ機能的に推移すると考えれば、機能しない中間段階を仮定することになると主張する。彼によれば、「たとえ発達の記録として化石の証拠を持ち出しても、現実の証拠は、最初からのデザインという立場を、はるかに確実に整合性あるものにする。つまり鳥類の呼吸メカニズムは確実にインテリジェント・デザインの産物なのだ。」

International Journal of Design & Nature and Ecodynamicsは、ID支持の雑誌でないというだけでなく、マッキントッシュ博士のこれらの論文には、実は次のような断り書きがついている――

この論文は伝統的な見方とは異なったパラダイムを提示するものである。本誌はこれを、この代替的見方の完全な正当性を示すものではない探索的な論文と考える。読者は、このジャーナルやレビューアーが、この論文の結論に合意していると考えないでいただきたい。これは、システムが自分自身をデザインし組織化することができるという旧来の見方に挑戦する貴重な貢献である。本ジャーナルは、この論文が、この重要な問題についての考えの交換を促進することを期待する。コメントは「編集者への手紙」として寄せていただきたい。

マッキントッシュの論文“Information and Entropy…”は最近、ドイツのBASF研究所の有機化学者Royal Trumanから、これを支持する「編集者への手紙」を受けた。トルーマンは、マッキントッシュはDNAポリメラーゼ、リボソーム、酵素など、分子機械を調べたが、この他にも多くの分子機械や、情報処理という生命に最も基本的な機能に要求される特定の構成部品があることを指摘している。

(訳者:例は略する)

トルーマンはさらに、「マッキントッシュは、有効なエネルギー処理には特別 な機械が要求されることを気づかせたことによって、大きな貢献をした」と指摘している。しかし問題は、トルーマンが言うように、「生命体における、変異を通 じての複雑性や情報の増加の困難さ」である。彼はこう尋ねる――

ランダムな変異は、実質的・平均的に、複雑なプロセスのコード指令を破壊する効果 をもつと考えるのがより現実的ではないのか? マッキントッシュは、ほとんどの変異は有害だが、それはたいてい中立的な領域で起こっていることを確認している。(International Journal…4(4),pp.351-385,2009.)

Doug Axeを引用してトルーマンはこの疑問にこう答える――

タンパク質は通常、必要以上に健全さを保つようにデザインされているようだ。例えばアックスの指摘によると、正しい折りたたみ構造を維持するために、salt bridges(塩橋)や他の相互作用など、必要とされる以上の特徴が備わっている。1個の安定ボンドを破壊しても、そのタンパク質の安定性や機能に、何の影響もないか、無視できる影響しかないのが普通 である。彼はこれをbuffering effect(緩衝効果)と呼んでいる。研究の示すところでは、さまざまな変異は個別 的には無害だが、重なるとそれはタンパク質を害する。その相乗効果 を示している論文もある。例えば、もしある生物が1つのAAの変化に対して生き残る確率が90%だとすると、そのような変化が同時に3つ起こったとき、確率は0.9×0.9×0.9=0.73に落ちる。アックスのデータでは、これは全体としてほんのわずかの変異あるいは変異の結合に対して起こるだけであって、そのときは機能の喪失が完全となる。

こうした研究を概観した上で、トルーマンは「ランダムな変異プラス選択が、複雑な新しい機能を形成する材料になるとは考えられないことだ」と結論する。

International Journal…に発表されたID支持の論文について、更に詳細は、私たちのpeer-reviewed articlesのページを参照されたい。

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