Evolution News & Views

この一年の回顧――英国におけるID

Jonathan M.
December 28, 2011

IDへのよく聞かれる批判は、これはもっぱらアメリカだけの現象だ、それ以外の国はこんなものに躓くほど馬鹿ではないのだから、というものである。もちろんこれは馬鹿げている。IDはヨーロッパでもアジアでも、著しい進展を見せている。私の個人的な経験から言えるのだが、特に英国において見通 しは明るい。

2010年9月のUK Center for Intelligent Design (C4ID、英国IDセンター)の開所と11月のMichael Beheによる開所記念講演・講演旅行以来、英国のID共同体は、さまざまのスタートを記念する著名人士による集会などで、多忙な2011年となった。

C4IDの主導的スタッフには、Dr. Norman Nevis会長(ベルファスト、Queens University医学遺伝学名誉教授)、Dr. David Galloway副会長(スコットランド、グラスゴー、Royal College of Physicians and Surgeons副学長)、Dr. Alastair Noble所長(教育コンサルタント、前科学教育視学官)がいる。C4IDはディスカヴァリー研究所と友好関係にあるが、活動的には独立した組織だ。

2011年の最初の大きな集会は、7月に行われた5日間サマースクールで、ウスターシャの美しい町マルヴァーンのMalvern Conference Centre主催で行われた。会議の発表者は、基調講演者として、社会学者Steve Fuller教授、天文学者Guillermo Gonzalez教授、生物学者Dr. Jonathan Wellsであった。この集会では、シニア外科医Dr. David Galloway、Barrister John Langlois、C4ID 所長Dr. Alastair Noble、生化学者Chris Shaw教授、熱力学と燃焼理論教授Andy McIntoshなどの英本国の学者も発表した。さらに、ある英国の法律家が、ドーヴァー裁判とジョーンズ。裁判官の誤った裁定を論評した。

この会議は、たいていの場合初対面として、英国各地から集まったID支持の科学者や思想家を結びつける働きをした。我々は1日3つの講義のすべてに出席したが、休憩時間には、IDや進化論に関するさまざまな問題、また将来の戦略や計画について、意見を交換し探究した。

2番目の大きな集会は、9月に同じ主催で行われた2日間のID会議であった。この会議に参加したのは、ディスカヴァリー研究所の哲学者Dr.Jay Richardsであった。またこの時の特筆すべき参加者は、Dr. Geoff Barnard(臨床生化学者で、前ケンブリッジ大学獣医学部のシニア研究者)で、バーナードは現在イスラエルに住んでいる。IDサークルでは、彼は性の進化についての仕事によって最もよく知られている。リサーチ・プロフェッサーのChris Shaw(タンパク質工学)もスピーカーとして出席した。

両方の会議とも、英国の科学者、学生、専門外の人々の示すIDへの関心に、私は強く印象づけられた。

3つ目の2011年の重要な出来事は、Stephen Meyerのロンドン訪問であった。ホワイトホールのRoyal Horseguards Hotel宴会ホールにおいて、約90名の招待客を前に、マイヤーはSignature in the Cell(細胞の中の署名)で提起したテーマを示し、その正当性を弁じた。この時の聴衆には、科学者、哲学者、政治家、メディア代表者など、多様な方面 の人々がいた。ID the Futureを検索すれば、彼のイギリス訪問の体験談を聞くことができる。またマイヤーの講義への批判の試みを、私が分かり易くしたものを読むこともできる(リンク)。マイヤーの訪問の際は、サウサンプトン大学の生化学者で“Christians in Science”ネットワークを主宰する有神論進化論者Keith Foxとのラジオ討論も行われた。

C4IDのウェブサイトは、英国のID運動にかかわる数人の論文を掲載している。また2010年11月にオックスフォードで行われたID会議の、専門的に製作されたDVDを販売している店もある。発表者はマイケル・ビーヒー、スティーヴ・フラー、ジェフ・バーナードなど。

予想されたことだが、C4IDは反対されずには済まない。アメリカのダーウィン・ロビーのNCSEにあたる英国の機関BCSEは、ID批判者の一団を整列させ、構成の下手なウェブサイトを設立した。そのメイン頁はここ(リンク)、ブログはここ(リンク)にある。その下手なデザインの見本としては“Centre for Unintelligent Design”というふさわしい命名の頁が一番だろう。しかし悲しいことに、NCSEとは違って、科学あるいはIDへの科学的批判が彼らのブログに載ることはほとんどない。

創造論やIDを学校で教えることを禁じようとする2つの請願書が、2011年に出された。その一つはリチャード・ドーキンズとDavid Attenboroughを代表とするもので、次のように言っている――

創造論と「インテリジェント・デザイン」は科学理論ではない。しかしそれらは、自分たちの考えを公立の学校で推進しようとする一部の宗教的ファンダメンタリストによって、科学理論であるかのように宣伝されている。しかしやはり進化論を理解することが、生物学の全ての面 を理解するのに最も重要である。現在、進化論の学習は、国定カリキュラムでは10年生(14−15歳)まで明確には行われない。「自由学校・学園」は国定カリキュラムを教えるように義務付けられていない。したがって進化について教える義務は全くない。我々は政府に対し、創造論と「インテリジェント・デザイン」は科学理論でないことを明確にし、公的資金による学校のみならず、「宗教」学校、宗教的学園、宗教的自由学校でも、これらを科学理論として教えることを禁ずるように要請する。それと同時に、我々は政府が、すべての公立学校において、初等・中等の段階での進化論教育を、必修とすることを願うものである。

このキャンペーンの支持者には、British Humanist Association (BHA)や、C4IDのメディア・レリースが言うところの、「進化論批判に反対の長い歴史もつリベラル神学の圧力団体」である“Ekklesia”が含まれる。

イギリスのプロ進化論ロビーの進めるもう一つの先導運動は、CrISIS(“Creationism In School Isn’t Science)というキャンペーンである。彼らのウェブサイトはこう言っている――

創造論は、科学的事実に反するものとして知られ、そのように公的に認められている。したがって我々は、創造論が正当な科学的立場として提唱されることがないように、また創造論者のウェブサイトや諸手段が、公的資金による学校や、公的資金による学校の構内で行われるいかなる青少年活動においても、使用されることのないように要望する。

この問題はもちろん、「創造論」という用語が通 常、よく定義されておらず、進化論推進派グループが、科学的唯物論批判のすべてを、宗教に動機をもつものであろうとなかろうと、「創造論」というレッテルでひと括りにしようとするところから生ずる。

2つの反ID集会が2011年、“Glasgow Skeptics”主催で行われ、私は両方とも出席した。最初に話したのはミネソタ大学モリス校のPZ Myersであった。これについての詳細は、このブログ・シリーズ(リンク)や、このID the Future(リンク)を参照されたい。NCSE所長のDr. Eugenie Scottもまたスコットランドへ出かけ、「進化論と地球温暖化の否定:いかに大衆が誤導されているか」という講演をしている(私のコメント、アラステア・ノーブルのコメントはここ(リンク))。

C4IDが乗り出した当初、このセンターはかなりのメディアによる反対と曲解を受けた。2010年10月、Herald Scotland紙は「アダムとイヴが信じられるか? 一流の科学者が〈聖書は真理だ〉と教えている」という記事を載せた。この論評は、事実の間違いと文章の間違いが同じくらい豊富なシロモノであった。いわく「彼らはスコットランドの最も著名な科学者である、彼らは世界は6日間で創造され、女はアダムのあばら骨から創られたと信じている、そして彼らはあなたの近くの学校までやってくる。」

この記事の明らかな間違いは別として(IDに宗教的内容はなく地球の年齢にもほとんど関与しない)、C4IDは、学校のカリキュラムを変える意図を全くもっていないことを明らかにした。IDを聖書の逐語解釈の一種だとしてこき下ろすヘラルド紙の試みは、IDは「宇宙のエンジニア、すなわち神が生命の最初の火を創造し、それからそれを発展させるために物理法則と自然選択を用いた」という(同じように不正確な)記者自身の言明とも矛盾するようだ。ノーブルとギャロウェイはこう応答した――

Chris Wattの論文「アダムとイヴが信じられるか?」を、我々は無念な思いで読んだ。そのインテリジェント・デザイン(ID)の扱いは、アラステア・ノーブルに対するインタビューの内容からほとんど全くかけ離れている。実に、この特集記事の主旨は完全に的外れである。この記事が言うように、センターが学校で聖書的創造論を教える計画を進めている、などというのは全く事実ではない。

我々もまた2010年10月、ガーディアン紙から取材を受けたが、これはもう少しバランスの取れた記事として発表された。C4IDの船出はまた、Nature News Blogからも注目された。上に言及した神学的圧力団体“Ekklesia”も2010年12月、彼らのウェブサイトに記事を載せ、「インテリジェント・デザインは欠陥のある護教論だ」と主張した。予想通 り、この記事はノーブルが彼の応答で指摘した通り、空想でこしらえた相手への攻撃、誤解・曲解に満ちている。

科学者、学者、学生から寄せられるIDへの関心がますます大きくなっていくにつれ、アメリカでDouglas AxeのチームがBiologos Instituteで立てたような研究体勢が、英国でも遠くない将来、設立されることであろう。スティーヴン・マイヤーが最近のインタビューで述べたように、IDは今や国際的なものになった。が、これはほんの序の口である。

最新情報INDEX