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科学報道記者はすぐ「生命だ!」と言うのをやめよ

Jay W. Richards
September 30, 2010

AP通信のSeth Borensteinは、天文学者たちが一つの惑星を、太陽系外恒星の生命の存在可能なゾーンに発見したと報じている。これは、この惑星がその表面 で水を液体の温度に保つことのできる、環恒星生命可能ゾーン(circumstellar habitable zone)にあるように見えるということである。「Gliese 581g」と名付けられたこの惑星は、地球からほんの20光年ほどしか離れていない。

この記事は環恒星生命可能ゾーンとしか言っていないが、地球に非常に近いことから、これはおそらく銀河系生命可能ゾーン(galactic habitable zone)内でもあるだろう。これは「グリーズ581g」が、惑星に生命が存在できるために必要な、主たる条件の2つを備えている可能性があるということである。

残念ながら、このような報道はこれまで何百回となされてきたので、私はこれを少しばかり懐疑の目で見ている。過去15年にわたって我々は、他の恒星を廻る地球に似たと考えられる惑星の話を聞かされてきた。この見出しはあまりにありふれているので、ボーレンスタイン記者でさえ、息をのませるはずのこの報道で、「科学者はこれまでも、我々の太陽系外の惑星上の生命の可能性を公言してきたが、それらは結局、それほど生命に都合のよいものでないことが明らかになっている」と認めている。

問題の惑星は地球のように自転しない(tidally locked)。したがって同じ面が常にその太陽に向けられている。だからそこに快適な気候というものはないはずである。それは地球の約3倍の質量 をもっていて、M矮星(M dwarf)であるその太陽に非常に近接している。このような恒星は、その高い活動レベルのために、生活できる惑星を宿すことはおそらくできない。

このような話を読むときには(そして今後しばらくそんな話はもっと出てくるだろうが)、2つのことを覚えておくことが重要だ。第1に、金星と火星の方が、これや、今までに見つけることのできたどんな太陽系外惑星よりも、はるかに地球に似ているということ。例えば、金星や火星は、1つの生活可能な惑星(地球)を宿すことがわかっている恒星の回りを廻っており、共にその軌道は、その生活可能な惑星にきわめて近い。にもかかわらず、そのどちらにもどんな種類の生命も存在していない。

第2に、たとえある惑星が、生命を宿すために必要な条件を全部備えていたとしても、そこに生命が存在するということにはならない。必要条件と十分条件は違うのである。天文学者はしばしば、太陽系外惑星を発見すると興奮してこのことを忘れるようだ。今度の件では、サンタクルーズにあるカリフォルニア大学のSteve Vogt(この新惑星の共同発見者)が、「ひとたび正しい条件が与えられれば、生命が現れない方が難しい」と言ったとして引用されている。このような主張にどんな経験的根拠があるのか私にはわからない。水があるからといって自動的に生物が現れるわけではない。

私は太陽系外惑星の生命の可能性を退けるのではない。この問題について私は開かれた態度を堅持している。多くの人々が、ギエルモ・ゴンザレスと私は『特権的惑星』で、生命は地球だけのものと論じていると考えているが、そうではない。我々が論じたのはただ、複雑な生命は、もしそれが他所に存在するとしたら、きわめて地球に似た惑星上にしか見つからないだろうということだ。この発見での主張を疑うというのではない。しかし、「グリーズ581g」には地球と共通 する2つばかりの特徴があるかもしれないが、それは金星や火星と比べても、地球とははるかに大きく異なった惑星である。

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