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遺伝子進化ゲームの遊び方

Casey Luskin
February 22, 2010

遺伝子進化ゲームの遊び方はごく簡単である。3つの例によって、どんな新しい遺伝子でもその起源を説明するのに役立つ3つのルールを明らかにしよう。そう、どんな遺伝子であってもだ! 簡単な例から始めよう――

ルール1: 遺伝子重複という魔法の杖
新しい遺伝子はどこから来るのだろうか? 「遺伝子重複」gene duplicationというのが、新しい遺伝子がどこから来るかを説明する典型的な方法である。それは次のようなやり方による:

(1)ある生物に観察される1つの遺伝子を考えてみよう。それを遺伝子Bと呼ぶことにする。
(2)遺伝子Bに似た別の遺伝子を見つけよう。それを遺伝子Aと名付けよう。
(3)過去のある時点において遺伝子Aが重複し、したがってその時点では遺伝子Aのコピーが2つあったのだと主張しよう。
(4)次に、これら重複遺伝子Aの1つが進化して遺伝子Bになったのだと主張することにしよう。

「遺伝子重複」というのは、だから非常に強力な説明で、図(略)にすればこんなふうだ。とても簡単なことだったのだ。これで遺伝子Bがどうやって進化したかがわかる。だから、配列のよく似た2つの遺伝子が見つかった場合にはいつでも、「遺伝子重複」という魔法の杖を使えば、一方が他方から進化したことが説明できる。

NCSE(ネオダーウィニズムの指導団体)こう言っている――「遺伝子重複はよく起こる出来事で、これは細胞複写 の過程での小さなエラーから生ずる。ひとたび遺伝子の重複が起こると、その1つが、すでに存在するその遺伝子の機能に危険を及ぼすことなく、変化して情報を増やしていくことが可能である。」――このことさえわかればよい。つまり重複によって説明するときには、その重複遺伝子が何か新しい機能を獲得するまでの、機能的進化の何かの筋道があるかどうかは、心配しなくてよいのだ。言い換えれば、新しい機能をもつ遺伝情報がどうやって生ずるかは気にしなくてよいが、そのわけは「遺伝子重複」が説明すべきことのすべてを説明しているからである! シャノンの言う意味での(複雑性を増しただけの)付加的遺伝子情報を手に入れることはたやすいことで、それだけの問題なのだ。

ルール2: 心配はいらない――自然選択がすべてやってくれる!
ところで明らかに、我々の見つける現代の遺伝子Bは、遺伝子Aに完全に似ているわけではない。もし完全に似ていたらそれは遺伝子Aだ。そこで我々は、どうやって遺伝子Aのコピーが新しい機能――機能B――を獲得したかを説明しなければならない。これこそ、どうやって新しい機能する遺伝子情報が生まれるのかを説明する、肝心の部分だろうと人は思うかもしれない。しかし、あろうことかなんと、実はこの部分こそこのゲームの最も簡単で手早く片付く部分なのだ。つまり我々は「自然選択」の力に訴えるだけでよく、それで問題は解決したことになる! 

遺伝子進化ゲームのすばらしいところは、自然選択がほとんどすべてを変化させる(あるいはそれを望まないときには、変化させない)ことができることだ。それが何であろうとだ。

細かいことは気にしなくてよい。もし遺伝子Bと遺伝子Aの違いを説明したければ、自然選択が常にその困難な仕事をやってくれる。遺伝子Aが機能Aから機能Bへ、小さな連続的な適応のステップを踏んで進化することができたのか、などということは気にしなくてよろしい。アミノ酸が変化した順序とか、機能の有利さを得るまでに多くの変異が必要だったのかどうか、などは気にしなくてよろしい(そういったことはいずれにせよ、あまりにも起こりそうもないことだから、無視すればよろしい)。適応上の制約、弱い選択、遺伝子変動に伴う損失などは気にしなくてよろしい。そして何よりも、これらの変化のすべてが、考えうる時間の範囲内で起こることが可能であったかどうかの、確からしさを決める計算などは絶対にやってはならない。

その遺伝子が進化したに違いないことが分かっているのだから、それは確かに進化したのだ。したがって自然選択をもう一つの魔法の杖と考えることができる。遺伝子が変化したり、進化して新しい機能を獲得するのを説明したいときは、いつでもそれを持ち出すことができる。この魔法の杖は非常に強力な道具であって、なぜものが変化するかも、なぜものが同じ状態を保つかも、ともに説明することができる(23)。ワオ!

ルール3: 「並べ替え」という魔法の杖
遺伝子進化ゲームをやるために、知っておかなければならない最後の1つの裏技がある。遺伝子Bは遺伝子Aに全然似ていないこともあれば、時には、遺伝子Bの一部は遺伝子Aに似ているが、他の部分は他の遺伝子に似ていることもある。後者を遺伝子Zと名付けよう。心配はいらない。ここはもっと説明しやすいところだ! まず重複という手を使うことから始める。遺伝子Aにも遺伝子Zにも、ともに重複が起こったと想像しよう。次に両方の重複コピーが突然ゲノムの間を大きく飛んで、今、1つの染色体上に隣接していると想像しよう。これが「並べ替え」rearrangementと呼ばれるものだ。もしこれがやや複雑と思われるなら、次の図を見てもらいたい(省略)。

ステップ1: 遺伝子Aと遺伝子Zは全然違った場所にいた。ひょっとしたら違った染色体にさえいたかもしれない。次に「並べ替え」と呼ばれる特別 のプロセスが突然起こって、遺伝子Aと遺伝子Zを移動させ、今それらはゲノムのどこか別 の場所に隣り合っている。「並べ替え」というのは強力な魔法の杖で、もともと遠く離れていたDNAの2つの部分が、どうしてくっつくかを説明したいときにこれを使う。それらはそこで新しい機能を持つ遺伝子を形成する。読者はこれで大体その仕組みが分かってきたであろう。

起こりうる「並べ替え」にはいろんな種類――挿入、消去、入れ替え、遠隔移動――があり、これらをほとんどどんな順序にでも、また必要なだけどんなに大量 にでも用いて、2つ、3つ、時には何ダースものDNAの部分をさえ、ゲノムのどこからでも自由に取り寄せ隣り合わせることができる。こうして魔術師の気合とともに、新しい機能をもつ遺伝子が生まれる。これらの並べ替えの種類を取り交ぜ組み合わせて、必要に応じてどんなDNA配列でも思いのままに作り出すことができる。「並べ替え」がいつでもそれをやってくれるのだ。

ここから先は一瀉千里だ。自然選択が働いて、並べ替えられた遺伝子を機能あるものへと完成させることができる。現実にそれがどう働くか、細かい実証などは気にしなくてよろしい。自然選択という粉をちょっとふりかければ、遺伝子Aと遺伝子Zは魔法のように機能を結合し、遺伝子Bへと進化するのだ。ほらこのようにして(図略)、我々の知るべきあらゆることの説明が完成する。

遺伝子重複、並べ替え、自然選択という3本の魔法の杖を使って、ほとんどどんな遺伝子の進化でも十分に完全に説明することができるのだ。

祖先が同定できないって? かまうものか!
問題は第一に、注目の遺伝子(遺伝子B)が、全く異なった生物種との相同性しか持たないことがあることだ。この場合、どのようにして遺伝子Bが問題の生物にやってきたのだろうか? こうした場合には、横的遺伝子転移(lateral gene transfer,LGT)というのを使って、正しい遺伝子を問題の生物に取り込めばよいだけである。「横的遺伝子転移」がそれらの生物間で起こったと考えられるのかどうかさえ、どうでもよいことなのだ――もし必要とする遺伝子が何か他の種に見つかれば、それがそのこと自体によって、横的遺伝子転移がそれらの生物間で起こっていることの証拠になるのだ(24)。

第二に、問題の遺伝子の一部が、どんな他の知られた遺伝子の部分とも似ていないことがある。「ではこの遺伝子はどこからきたのか」と不思議がる人があるかもしれない。ここでもやはり心配することはない。自然選択について言ったことを忘れないでいただきたい。それはどんなものでも変えることができるのだ。だから、もしどんな似た遺伝子も見つからないとしても、その問題のDNA配列が自然選択によってあまりにも大きく進化したので、もはやその祖先の配列には全く似ていないのだと考えればよい。しかし心配はご無用、それは祖先がなかったと言っているのではなく、そういうことはありえないのだ。それは、自然選択の強い力があまりにも大きく遺伝子を変えたために、いかなる祖先的配列をも同定できないというだけのことである(25)。

遺伝子進化ゲームの定石と禁じ手を要約すれば:
この時点で読者は、最後にあげた例について疑念がおありかもしれない。そこで先へ進む前に、訊ねる必要のないいくつかの疑問点をおさらいしておくことにしよう:

*変異というものの知られた効果 や率から考えてみて、遺伝子Aと遺伝子Zが突然並べ替えられて隣り同士となり、さらにこれが1つの新しい遺伝子産物、遺伝子Bとして、協調して機能するようになる可能性(確率)とはどの程度のものだろうか?


*並べ替えられた遺伝子産物Bは、初めから機能したのだろうか? そうでないとしたら、どれくらい早くそれは機能を得たのだろうか? それが機能をもつ前に消される危険からどうやって護られたのだろうか?


*この筋書きが想定しているほど、タンパク質は本当に適応力があるのだろうか? 新しい結合した遺伝子は、折りたたみや、他の周囲との問題に遭遇しないのだろうか?


*いかなる変異の道筋をたどって遺伝子Aと遺伝子Zは、機能Bをもった新しい遺伝子に進化したのだろうか?


*この進化の道筋の小さなステップごとに、どんな選択的利点が獲得されたのだろうか?


*何らかの「大きなステップ」(すなわち複合した特定的変異)が、進化の道筋において選択的利点を獲得するために、要請されたのだろうか? そのような「大きなステップ」が起きる可能性があるだろうか?


*こうしたことすべてが、考えられる時間スケールで起こりえただろうか?

こうした疑問について心を煩わす必要はない。実は、信じてもらえないかもしれないが、問題の遺伝子がAからZへ進化したと主張するのに、その機能を知る必要さえないのである。知る必要があるのはただ、遺伝子A,B,Zが存在するということだけである。遺伝子進化ゲームの3つのルールの要約は、どんなことでも説明するのに役立つだろう――

遺伝子進化ゲーム・ルール1: 2つの遺伝子間に配列の相同性(似かより)を見つけたときはいつでも、何らかの仮説的な、古い時代の遺伝子の「重複」を持ち出せばよい。そうすれば、いかにして2つの異なった遺伝子が互いに似るようになったかを説明できる。

遺伝子進化ゲーム・ルール2: ある遺伝子がどうやって何らかの新しい機能を獲得したか、あるいは別 の遺伝子との違いを進化させたかを説明する必要のあるときは、自然選択という魔法の杖を持ち出すだけでよい。新しい遺伝子に何かの利点があったかとか、一足飛びに適応に至る道筋があるのかといったことは、実証する必要はない。最後に自然選択は、問題の遺伝子が特に類例のないものであるときに役立つ。自然選択はどんなものでも変えることができるのだから、自然選択が問題の遺伝子を変えて、その祖先とは似て似つかないものにしてしまったのだと結論すればよい。

遺伝子進化ゲーム・ルール3: ある遺伝子が数個の遺伝子の部分からなっているように見えるときは、そのDNA配列すべてについて、「重複」と「並べ替え」を適用して、すべてが同じ正しい場所に集まるようにすればよい。ある遺伝子を消去したり、入れ替えたり、新しい場所へ移動させたりする必要のあるときは、いろんな種類の並べ替え道具を使って、好きなだけ何度でも自由に操作すればよい。そうすれば目的の遺伝子は思いのままに得られる!

忘れてならないことは、これ以外の難しい質問はしてはならないということだ。これら3つのルールだけを用いるようにすれば、事実上どんなことでも説明ができる。細かい問題は考える必要がないのだ!

引用文献
(23),(24),(25)について、それぞれ詳しい文献が紹介されているが省略する。

(付記)このブログ記事は、NCSE、ジョーンズ裁判官、ケン・ミラーその他、進化論圧力団体の、新しい遺伝情報の起源に関する考え方への、8部からなる反論の5番目のものである。しかしこの部分はからかい半分に書かれたもので、ネオダーウィニストが新しい遺伝情報の起源を説明しようとするときの議論の、パロディと解釈していただきたい。ネオダーウィニストが、特にここに述べたような間違いを犯すことを示す多くの例を、引き続きここで取り上げていく予定である。

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