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ジャンクDNA総括(と反論)

―いかにネオダーウィニズムが“ジャンク”仮説を作り出し、
その退位に抵抗しているか 

By: Casey Luskin
June 5, 2009

今は通用しないジャンクDNAという考え方が、いかにかつてはネオダーウィニズムによって奨励され育成されたかを説明したあとで、進化論者はしばしば、それでも彼らの陣営の中にはジャンクDNAの機能を探求した者もいると主張して批判をかわそうとする。彼らはこれによって、ネオダーウィニズム陣営がサイエンス・ストッパーだという非難を逃れることができ、ネオダーウィニズムというパラダイムはジャンクDNAの研究を妨げたわけではない、と言いたいのである。しかし2003年「サイエンス」誌の次の論文が多少とも実態を示すものなら、ネオダーウィニズムは現実にジャンクDNAの機能を研究することをタブーとしていたことがわかる。この論文はこう言っている――

受けのよい言葉だが、「ジャンク(がらくた)DNA」という名称は、主流の研究者がコードしないDNAの研究に寄り付かないようにさせてきた。ごく少数のゲノム狂の変わり者以外に、誰がゲノムのごみをあさろうとするだろうか? しかしながら一般 世間と同じで、科学の世界にも変わり者がいて、笑い物になるのも気にせず不人気の領域を探求する者がいる。彼らのおかげで、ジャンクDNAの見方、特にその反復する要素の見方が1990年代初期に変わり始めたのである。(Wojciench Makalowski,“Not Junk After All,”Science,Vol.300(5623):May 23,2003.)

これほどはっきりした証言があるだろうか。この2003年の記事は、「ジャンクDNAという名称」が長年にわたって「主流の研究者がコードしないDNAの研究に寄り付かないようにさせた」ことを認め、さらに現実に「ジャンクDNA」の機能の研究を行った生物学者たちは、「笑い物になる危険を冒した」と言っている。世評が肝心の科学の世界では、自分の研究対象を、金や俗受けや称賛がたやすく実現するような方面 へ移す方が楽で、人が寄り付かない笑い物になるような研究はしないのだ。

現に、嘲笑の危険を冒してジャンクDNAの機能を追求した進化生物学者でさえ、ある者は彼らのパラダイムがジャンクDNAの探究を窒息させたと言っている。同じく2003年、ジャンクDNAの機能の研究のために目立つ存在である進化生物学者John Mattickは、「サイエンティフィック・アメリカン」誌に次のような注目すべき批判をしている――

私はこれは、正統派学説が、事実の客観的な分析を正しい道から脱線させる――この場合4半世紀にわたって――ひとつの物語になるだろうと思う。・・・このことに含まれる十分な意味合いを認めないということ――特に、介在するコードしない配列が並行的な情報をRNAの形で伝えているかもしれないという可能性――は分子生物学の歴史の最大の過ちの一つとして後世に伝えられるかもしれない。(John S. Mattick quoted in W. Wayt Gibbs,“The Unseen Genome, Gems Among the Junk,”Scientific American, Nov.2003)

ほとんど棄てられたジャンクDNAという考え方は、ネオダーウィニズムというパラダイムから生まれてきて育ったものである。もし誰か不届きなダーウィン生物学者(や非ダーウィニスト)がジャンクDNAの機能を研究するだけの勇気をもっていたとするなら、それはすばらしいことだが、それはネオダーウィニズム・パラダイムのゆえにでなく、それにもかかわらずなされたことなのだ。

フランシス・コリンズ立論の真偽チェック:反復DNAの機能の発見
これまで我々は、著名な進化生物学者フランシス・コリンズの共通 祖先の主張が、いわゆる「ジャンク」の反復DNAに機能がないと言われていることに、いかに大きく依存しているかを見てきた。論文「サルと人間の共通 祖先を主張するフランシス・コリンズのダーウィニズム弁護への回答」の中で、Logan Gageと私は、反復DNAのさまざまな機能が発見されている事実を詳述している。以下に掲げるのは、最近数週間の間に発表された、いわゆるジャンクの反復DNAが機能をもつという発見の、2つの研究報告の要約である。

5月30日付「サイエンス・デイリー」に載った論文は、いわゆる「タンデム(一列につながる)反復」が、これまで「無用のゴミ」と考えられてきたが、今では機能をもつと考えられると述べている――
科学者たちはこれまで、遺伝子以外のDNA,いわゆるコードしない(non-coding)DNAのほとんどが、我々のゲノムの中にひそかに入り込んで出て行こうとしない無用のゴミだと考えてきた。このような「ジャンクDNA」の一般 によく知られている例は、いわゆるタンデム反復、すなわち前後につながって繰り返されるDNAの短い連続部分である。「一見すると、この吃るようなDNAが生物学的機能をもつことはあり得ないように思える」とMarcelo Vincesは言っている、「しかし一方、自然がこのような無駄 なシステムを育成するとは信じにくいことである。」
もちろんネオダーウィニズムは、この問題を解くのに役立たなかったことを我々は知っている。ではこの反復DNAの機能とは何か? この論文は次のように説明している――

科学者の国際チームが、タンデム反復の部分は近辺の遺伝子の活動に影響を与えていることを発見した。この反復は、局所的DNAが「ヌクレオソーム」と呼ばれる特定のタンパク質を、いかに固く包み込むかを決定する。そしてこのパッケージ構造が、どの程度まで遺伝子が活性化されるかを支配する。面 白いことに、タンデム反復は非常に不安定だ――反復の数が、DNAがコピーされるとき頻繁に変るのである。この変動が局所的DNAの包み込みに影響を与え、さらにそれが遺伝子の活動に変動を与えるのである。このようにして不安定なジャンクDNAが遺伝子活動にすばやい変化を促し、これによって生物が変化する環境に適応できるように遺伝子の活動を調整しているのである。これは限りなく続く進化レースにおける生き残りのための決定的な原理なのだ。

ここから進化物語の用語を抜いて考えるならば、ジャンクDNAは遺伝子がいつ、どこで活性化されるかを決めるのに役立っているのがわかるだろう。

もう一つ最近の5月21日付「サイエンス・デイリー」の論文「“ジャンク”DNAは重要な役割をもつことを科学者が発見」は、トランスポゾンの機能を見出している。トランスポゾンはもちろん反復DNAのもう一つのありふれた形である。

池の生物のゲノムを研究しつづけていたプリンストン大学とインディアナ大学の研究者たちは、ジャンクDNAは結局いわれるほどジャンクではないことを突き止めた。「なくてもよいゲノム」とみなされてきたDNA配列の領域は、実際には生物にとって中心的な機能を果 たしていることを彼らは発見した。これらの遺伝子は、生物が成長するのに必要な、ゲノム全体のほとんどアクロバット的な再配列を促進するものであるというのが結論であった。


それはすべて非常に速く起こる。池に棲むオキシトリカ(Oxytricha)という単細胞生物のトランスポゾンと呼ばれる遺伝子は、トランスポサセス(transposases)という細胞タンパク質を作り出す。発生の間、トランスポゾンは最初、何十万というDNAピースをグループ分けし直すために現われる。それから、その必要がもうなくなると、生物は賢明にもその遺伝子物質からトランスポサセスを消去してしまい、そのゲノムを元の量 のたった5%にまで削減する。

この論文は結論として、トランスポゾンの遺伝子を調整する機能は、「利己的DNA」が実は生物にとって有益なものであり、無益なジャンクではないのであろうと言っている。

「ジャンクDNA」という名称は、もともと遺伝情報を含まないDNAの部分を指すものとして造語された。しかし科学者たちは今、いわゆるジャンクの多くの部分が、遺伝子活動の制御という重要な役割を果 たしていることを発見しつつある。この役割がどこまで拡張されるであろうかは、今のところ誰も知らない。


そう考えないで、科学者は時にこれらの領域を、もしそれらが宿主生物の繁殖に特定の貢献をしないのであれば、「利己的DNA」と呼んだりする。嫌になるほどに自己増殖をするコンピューター・ウイルスのように、利己的DNAは自己を複製し、親から子孫へと、もっぱらDNA自身のためにこれを引き渡すのだと言う。しかし最近の研究は、利己的DNAトランスポゾンのあるものは、そうではなく、その宿主にとって重要な役割をなすもので、そのためにこそゲノムの長期滞在者として定着していることを示唆している。

トランスポゾンや他の反復する要素は、進化論者によって、機能をもたないジャンクDNAの証拠として長い間引用されてきた。すでに述べたように、フランシス・コリンズは彼の共通 祖先という論点を証明するものとして、反復DNAを大々的に利用している。反復DNAを含め、いわゆるジャンクDNAの機能が発見されつつある趨勢にかんがみて、我々はこの議論を信用すべきだろうか? もしネオダーウィニズムが、生物学研究を方向付ける支配的パラダイムになっていなかったとしたら、どれだけもっと早い時期に、これらの発見がなされたことであろう。これは読者各自のご判断にまかせよう。

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