Discovery Institute News

シェーンボルン枢機卿、
ID問題に関し明確に立場を語る

Tom Heneghan
Reuters
November 20, 2005

ウィーン発(ロイター)――オーストリア出身の枢機卿クリストフ・シェーンボルン(Christoph Schoenborn)が、合衆国の白熱した進化論争に乗り出していったとき、彼の目的は、アメリカの学校に、神が六日間で世界を創ったと教えるように勧めることではなかった。

また、チャールズ・ダーウィンや彼の『種の起源』を非難することでもなかった。ウィーンのローマ・カトリック大司教であるシェーンボルンは、この本を思想史上の偉大な著作と考えている。

ウィーン中心部にある司教宮殿で、シェーンボルンがロイター通 信社に語ったところによると、彼の関心事は、イデオロギー化した論争において、常識の側に立つことであったという。科学者がその分限を踏みこえていると教会が考える点について、はっきりさせておきたかったのだと彼は語った。

「いま教会のなすべきことは理性を擁護することです」と、現在は法王ベネディクトとなった、彼の以前の神学教授ヨゼフ・ラツィンガーから吹き込まれた思想であるとして、彼は言明した。

「進化論というのは一つの科学理論です」と彼は言った。「私が進化思想と呼んでいるのは、ビッグバンからベートーベンの第9交響曲にいたるまで、宇宙の全発達のすべてを、進化で説明できるというイデオロギー的な見方のことです。」

しばしば将来の法王候補と目されるシェーンボルン(60歳)は、去る7月「ニューヨーク・タイムズ」の署名記事に、世界の起源についての「インテリジェント・デザイン」の見解を支持する論文を寄せて以来、アメリカの科学者たちの棘のある攻撃にさらされていた。

より激しい批判者は、彼のことを、科学をクリエーショニズム――すなわち神は聖書の創世記に書いてある通 りに世界を創ったとする考え――によって置き換え、アメリカの教育を一世紀も前に引き戻そうとする薄のろであると攻撃した。

この非難を微笑でもって退けながら、枢機卿は、ダーウィンの業績には敬意を払うが、科学の証明能力を超えていると彼の考えるネオ・ダーウィニズムの見解を、否定する立場を説いてみせた。

「創造についての聖書の教えは科学理論ではない」と彼は、反ダーウィンの、若干の保守的なアメリカのプロテスタントの文字通 りの解釈とは対照的な、カトリックの見解を再説しながら言った。「創造についてのキリスト教の教えは、進化論の代替物ではないのです。」

インテリジェント・デザイン

シェーンボルンは、生命の複雑さは明らかに、このシステムを考案したに違いないよりすぐれた知性を指し示しているという、インテリジェント・デザイン理論に賛同する。ただ彼はその根拠を、ID理論家のように科学にでなく、理性に置くのだと言った。

「次の段階は、どのような知性かという問題だが、信仰者として、私はもちろん創造者の知性だと思う」と彼は語った。

IDをアメリカの学校で教えることについての是非について聞かれると、シェーンボルンは直接のコメントを避けた。あるペンシルヴェニア州の教育委員会は今月、IDを理科のクラスで教えることを支持したために、選挙で解任された。一方、カンザス州はこれを教えることを決定した。

彼の考えでは、オーストリアの私立・公立の学校は、理科の授業に「宇宙というインテリジェンスの計画」という言葉を導入すべきだという。これはベネディクト法王が先週、明らかにIDを支持する発言の中で使った言葉である。

1992年版の教会の権威ある教理問答書の編集者で、愛想のいいドミニコ会士であるシェーンボルンは、ダーウィンですべての説明はできないと言ったことに対して、彼が受けた批判の一斉射撃に驚いていると語った。

批判を支持

「もしこれが科学理論だというなら、それは科学的批判に対して開かれているべきです」と彼は言った。「私が批判しているのは、この理論が説明できないいくつかの問題があると言っただけで、ダーウィンの権威を犯すことになるかのような、これを免疫化しようとする一種の策略です。」

「これを議論することに対する一種の禁止令があり、進化論を批判する者は、最初から信用を奪われ差別 されているのです」と彼は言う。

「私が学校にあってほしいと思うものは、積極的な意味での批判的で開かれた精神です。進化論をドグマにするのでなく、それは一つの理論で、かなりのところまでそれで行けるが、いくつかの疑問に対しては答えられないのだと皆が言えるような雰囲気です。」

彼は、ダーウィン説の科学的に現代化されたものであるネオ・ダーウィニズムと、その自然選択――いわゆる「適者生存」――が、物質からランダムに生命を創り出すという主張は疑問だと言う。

「人間や生命の起源が、物質的原因だけで説明できるなどと、我々は理性的に言えますか?」と彼は尋ねた。「物質が知性を創り出すことができますか? それは我々が科学的には答えることのできない質問です、科学の方法ではそれは掴まえられないのだから。」

「常識で考えれば、物質が自分自身を組織化できないことぐらいは分かります。そうするためには情報が必要なのであり、情報はインテリジェンスの現れです。」

進化に関する数点の科学専門書を読んではいるが、シェーンボルンは、彼がネオ・ダーウィニズムに反対する根拠は、本質的に哲学的なものであることを強調した。

彼の指導者であるベネディクト法王と同様に、彼は唯物論というもの――物質が唯一の現実であるという科学に基づく考え方――が現代人のものの見方において、宗教的・精神的な思考を排除してしまうことを、深く憂慮していると語った。

「鍵となる問題は、すべて唯物論にかかわるものです」と彼は結論付けた。

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